過程も傷も価値になる。独立時計師・菊野昌宏さんが刻み続ける時計への愛
その扉を開けると、静寂の中で時計の針が動く音がする。ここは今回のミモザなひと、独立時計師の菊野昌宏(きくのまさひろ)さんの自宅兼工房。部屋の中には色も形もさまざまな時計が置かれ、それぞれに意味を持つテンポで時を刻む。
部品・工程ごとに分業制で生産されるのが一般的な時計作りにおいて、独立時計師はそのすべてをひとりで担う。現役の職人は世界でたった40人ほど。そのうち、日本で初めてその職に就いたのが菊野さんだ。
こだわりは、ねじ、ばね1つとっても手で作りあげること。時計1本の製作にかかる時間は数年単位で、完成までのプロセスは果てしない。しかし、菊野さんはそのプロセスこそ愛おしいと語る。人生と時...