誰かを測る必要も測られる必要もない。大人も子どもも自由に選び、歩んでいける
※グローバルツリーインターナショナルスクールが運営する、未来志向の初等教育機関(オルタナティブスクール)。堀江貴文さんが主宰、岩崎さんが代表を務める。
岩崎:はい。堀江さんがこれまで創ってきたスクールに共感してくださって、一緒に新しい学校を創ることになりました。教育事業にはゴールがありません。世界が変わっていく中で、その時その時のいいものを取り入れて変わっていく必要がある。堀江さんと初めてお会いした2年前は、ちょうどコロナ禍の影響で、小学校に行けなくなった子たち・行かなくなった子たちがたくさん出てきた時期だったんです。
堀江さんはその状況に対して、「タブレットを使って自宅で勉強して、何も困らないから学校に行く必要がないって気づいた子がたくさん出てきた。学校に行かないことが問題なんじゃなくて、その子たちが楽しく通えるようなスクールがないことが問題なんじゃないか」と。いろんな子がいて当たり前。すごく共感しました。
開校に向けて作成しているカリキュラムも、「どんな子も個性を伸ばせるように」という考えで、ギフテッド教育なども取り入れたものになっています。
岩崎:ギフテッドとは、特定の分野で顕著な能力を持っている子たち。才能があると同時に、感受性の強さなどの特徴も併せ持っていて、日常的に困難が起きる場合があります。人より理解が早すぎて足並みを揃えるのが難しかったり、みんなと同じ枠組みが窮屈だったり……そういった子が能力を発揮できるようサポートするのがギフテッド教育です。
実は、私のきょうだいがギフテッドなんです。勉強はすごくできるけど、授業を聞かないから内申点が低くて「志望校にはいけません」と言われていました。一般的な学校の物差しに合わず進路が狭まっていく場面を近くで見てきた。それもあるから、ひとりひとりに合った学びの方法があると実感しています。公立の小学校での学び方が合っているならそこで楽しく過ごせばいいし、そうでない子は自分に合ったやり方で学べる場所が必要だと思います。
柴:社会に出た後の世界でも通ずるところがあるなと。ひとり一人に個性があって、それを制限されるとすごく苦しいですよね。僕は営業管理職ですから、営業所のメンバーにはそれぞれに合ったやり方で、僕の顔色を気にせずにお客さまと向き合ってほしいと思ってやっているんです。だから、すごく共感できるなと。
岩崎:そうですよね。大人も自分に合っていない物差しで測られると苦しい。そもそも私は「大人が子どもに教えてあげなきゃ」とも思ってません。
私たちのスクールでは大人も子どもも、人間として対等に接することを大切にしています。子どもたちは大人が知らないことをたくさん知っている。自分で動いて、学ぶことができる。もちろん危ないことは「危ないよ」と伝えなくちゃいけません。でも年齢が上というだけで、大人が「何でも知っている偉い人」として子どもたちを測る筋合いはないと思っています。
岩崎:柴さんに理想のスクールの夢を話したのは10年前。振り返ってみると、あのころから世界も大きく変わったし、私の理想も一日一日変わってきたなと感じます。「子どもたちに幸せでいてほしい」という気持ちは一貫していて、私としてはそう感じてもらえるスクールは作れたと思っていますが……もっといろいろな子たちが幸せを感じられる場所を創っていきたい。まだまだこれからだと思っています。スクールを運営する私たちも学び続けて変化していかなければいけません。
柴:ただただ嬉しいです!一緒に働いていた仲間というのももちろんありますが、そもそも岩崎さんが描く理想にすごく共感していますので、その理想が形になって広がっていくのが嬉しい。岩崎さんの活躍をこれからも変わらず応援したいです。
岩崎:学校も、仕事も、仕方なくそこにいくんじゃなくて、「自分で選んだ」という実感を持てる世界になったら嬉しいです。
私自身、ずっと自由に自分で選択できていたかと言われると、そうではない時期もあったと思います。起業してからは「教育に携わる人間だからこうしなきゃいけない・すべきでない」とか、代表だから、経営者だから……いろいろなものに縛られていたと思います。
でも、子どもたちに「自由に自分で考えて選択してね」と言っているのに、自分自身を縛り付けるのはおかしいなと気づきました。
岩崎:はい。だから今は武術を習ったり、競技ポーカーの大会に出場したり、とにかくやりたいことを自由にやっています。「教育に携わる人がそういうことをやっていて大丈夫なの?」と思う方もいるようですが、そこはあまり気にせず。スクールや会社の代表である前に、私は岩崎ひとみですから。自分の社会的地位や所属に縛られずに生きたいと思っています。
私の選択を好ましく思わない人がいるのは仕方ない。それはその人の価値観だから。でも、それによって自分がやりたいことを制限したり、考えを改めたりする必要はありません。人生はいつ終わるかわからないから、今日終わっても「この人生でよかった」と思えるように、毎日、一秒一秒を生きたいと思っています。
人に左右されずに、後悔がないように。だから、私がこの世を去ったときに人から思われたいのは「お気の毒」じゃなくて、「楽しそうだったな、あの人」です。このインタビューも、とっても楽しかったです!
岩崎ひとみ
株式会社Global Tree 代表取締役。1988年秋田県秋田市生まれ。早稲田大学人間科学部卒業。インストラクショナルデザイン、行動分析学を学び、教育理論と実践に基づいた独自の教育理念を確立。大学卒業後、金融機関勤務を経て、2015年26歳で株式会社Global Treeを設立。2016年にGlobal Tree International Schoolを開校し、現在は新潟・秋田・本駒込・仙台・長岡の5校を運営中。実業家・堀江貴文氏の推薦を受け、2024年にゼロ初等部の代表に就任。
執筆:紡 もえ
撮影:大嶋千尋