いまの楽しさは、将来への不安と引き換え

画像1: いまの楽しさは、将来への不安と引き換え
―大学院生の頃には、祇園にある書店「京都天狼院」の店長も務められています。本好きの三宅さんにとって、書店で働くとはどんな経験でしたか?

三宅:いろいろな驚きや気づきの連続でした。

「雑誌って思ったよりも売れてる!」

「週刊・月刊の雑誌が書店に来るきっかけになってるのか」

「自分だったら手に取らないような本も、こういう人が買っていくんだ」

それまで思い描いていたイメージや、聞いていた話とは違う気がして。そこで感じたことは、いまの仕事にも役立っていると思います。とくに、本棚の選書はワクワクしながらやっていましたね。「売れている本中心」ではなく、そのときどきで好きに選ばせてもらっていたので、自分が手掛けた棚の本が売れるとすごく嬉しかったです。

―本棚の選書にも通じると思いますが、そのときに書かれたブログがきっかけで本を書くことになったとか。

三宅:そうです。書店のバイトのみんなが持ち回りで書いていくブログがあって、私にも定期的に書く機会がありました。

「書店のブログだから、本がお勧めできたらいいかな」と気負わずに書いていたのですが、そのうち『京大院生の書店スタッフが「正直、これ読んだら人生狂っちゃうよね」と思う本ベスト20を選んでみた。』という記事がバズりまして。ありがたいことに、その記事内の選書をベースとした『人生を狂わす名著50』という本を出版することになりました。

―もともと、「書いて発信する」ことはイメージされていましたか?

三宅:いや、まったくなかったですよ。だから最初は、実名でブログを書くのがすごく恥ずかしくて。でも、続けているうちに反響があると「もっとできるんじゃないか」という気持ちが芽生えてきて、タイトルや書き方を工夫し始めるようになる。工夫したらもっと反響が良くなって、また工夫して……と、だんだん夢中になっていったんです。

画像2: いまの楽しさは、将来への不安と引き換え
―その本の出版がきっかけとなって、文芸評論家への道につながっていくわけですね。ロールモデルが多くない仕事だと思いますが、その道に進むことに不安はなかったですか?

三宅:もちろんありましたよ。「収入どうなるのかな」とか「老後は大丈夫かな」とか……。なんとなく、40代くらいまではこの仕事で頑張れるイメージがありますけど、50代以降もこのまま食べていけるのかなって、未だに不安はあります。でも、将来への不安と引き換えに、いまの「楽しい」を選び取ってると思っているので。だからその不安はしょうがないと受け入れています。

―「将来の不安と引き換えに、いまの『楽しい』を選び取ってる」。なんだかすごく説得力があります。

三宅:私の場合、個人事業主といういまの働き方は自分にすごく合っている気がします。日々のスケジュールを自分で組み立てられますし、受けるお仕事も自分で選べる。

でもその働き方だとやっぱり企業にお勤めするような安定感はないですよね。大学院を卒業したあとに一度就職してIT企業でWebマーケティングの仕事をしていたので、それはすごく実感しています。

安定感はないし不安は大きい。でもやっぱり楽しいんです。日常考えていること、「こんな本作りたいな」という思いが形になって自分の名前で出版される。本が出来上がった瞬間の楽しさには、代えられないと思います。

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