プレゼンテーション資料の作成に欠かせない「パワポ(PowerPoint/パワーポイント)」。今回の「ミモザなひと」でご紹介するのは、そんなビジネスパーソン必携のパワポを武器に、人生をデザインしてきた豊間根青地さん(以下、トヨマネさん)だ。
ウケ狙いでTwitter(現X)に投稿していたパワポのスライドがバズり、「パワポ芸人」の呼び名で注目を集めたのは、今(2025年)から5年前のこと。ネタポストが次々と反響を呼び、資料作成やセミナー、書籍出版などと活躍の場を広げ、勤めていたサントリーを退職。2022年に資料作成業務を支援するシリョサク株式会社を立ち上げた。
ここ数年でいくつものキャリアの転換期を迎えているトヨマネさん。「目の前の人を喜ばせていたら、思いもしていなかったところまで来ていました」と笑う。
彼のキャリアをなぞりながら、資料作成の本質や仕事を楽しむマインドを紐解いていく。
豊間根青地
1994年生まれ、東京都出身。東京大学工学部卒業後、サントリーにてCRM/広告業務に従事。その傍ら趣味で投稿していたPowerPointのスライドがSNSでバズり、12万人以上のフォロワーを獲得した「パワポ芸人」として知られる。2022年に独立し、資料作成に特化したクリエイティブ企業シリョサク株式会社を創業。代表取締役として、企業向けに「秒で伝わるパワポ術」など著書2冊を出版。PowerPointという手段を通じて、「仕事をもっとおもしろく、組織と個人のアウトプット力を高める」ことをミッションに活動中。
昔からずっと、ウケたかった。“パワポ芸人”が僕の原点

@toyomane post on X
x.comトヨマネ:もともと2010年代からずっとTwitter(現:X)をやっていて、常に「どうしたらウケが取れるか」「おもろいこと言って拡散されたい」と思っていたんです。最初はテキストベースで頑張っていましたが、だんだん「画像を使ったほうが面白いんじゃないか」と感じ、2018年くらいからは画像ネタにも挑戦するようになりました。
で、コロナ禍でリモートワークになり、仕事に余裕ができたから投稿を量産するようになって。とあるフォロワーさんから「トヨマネさんのパワポを題材にしたオンライン演劇をやりたいから、パワポをつくってほしい」と依頼を受け、いくつか提案されたアイディアのなかから制作したのが「桃太郎」の資料でした。お堅いビジネスツールの「パワポ」と昔話「桃太郎」という、組み合わせの妙がウケたようです。
トヨマネ:イラレやフォトショはそもそも使用料が高いし、パワポは大学時代から日常的に使っていて身近だったからです。大学の授業中にもよくパワポで発表する機会がありました。僕、当時から「パワポ芸人」って呼ばれてたんですよ。
トヨマネ:ただ、あのころのパワポは自分にとって「単なる発表ツール」だったし、ウケていたのもしゃべりのほうだったと思います。プレゼン中に教授から厳しい質問を投げかけられたら「いい質問ですねぇ」と返してひと笑い取る、みたいな(笑)。まぁとにかく、そんなふうに笑いを取ることばかり考えていました。
トヨマネ:リーダーキャラで、人前に立って面白いことをやるのは好きでしたね。でも勉強も好きだったし、とくに言葉に興味がありました。回文※とかダジャレをつくったり、ことわざ辞典や辞書を読みふけったり……ごはんを食べるときには本が読めないから、牛乳パックの成分表示欄を読んだりして。活字中毒だったと思います。
※上から読んでも下から読んでも同じ言葉のこと
トヨマネ:今思えば、面白いことをやりたいという気持ちが、高校のときに一度爆発していましたね。文化祭、めっちゃ楽しかったんですよ。監督はふつう舞台にはあがりませんが、僕は本番も出ちゃいました。たまに出てきてウケをとるチョイ役があって、みんなチョイ役でも出たいからクラス内でオーディションをやったのに、最終的に「……俺やっていい?」って。みんなも「確かにトヨマネがやったほうが面白いね」と受け入れてくれました。

トヨマネ:「ウケる」って褒められてるってことだと思うから、基本目立ちたがり屋なんです。だけど、演劇はみんなでひとつのものを作り上げていくのがすごく楽しかったですね。一人じゃできないことにチームで取り組むって、面白いじゃないですか。
トヨマネ:自然が好きだったから、最初はヨットや自転車がいいかなと思っていたんですよ。でも、明確な目標がないと物事に打ち込めないタイプなので、3大カレッジスポーツと呼ばれるラクロス・アメフト・ボートから、自然と親しめそうなボートを選びました。
これがとにかく過酷でしたね。ボートって、2000mの距離を6~8分間全力で漕ぎ続けるスポーツです。全力で漕いで限界を超えると、ゴールインした瞬間に気を失ったりすることもあるくらい。毎朝5時起きの練習で、精神力と体力を鍛えきった学生生活でした。その力はいまもめちゃくちゃ役立ってます。
トヨマネ:どの場面というより、毎日ずっとそればっかり使っています。答えがないなかで走り続けながら、高速でPDCAを回さなきゃいけないのがスタートアップだから、どうやったらボートのスピードを上げられるかわからないけど、とにかくみんなで試行錯誤した経験にリンクしますね。難しいことにくらいついて取り組み続ける……ってことを当たり前だと思える力が、ボート部で培われたと思います。いくらAIが進化しても、働くうえで気合と根性みたいなものは超大事なんじゃないでしょうか。

