SDGsという言葉が一般に普及して久しい。いまでは国や自治体、さまざまな企業が持続可能な社会の実現に向けて取り組みを行っている。それに並走してきたのが、環境・サステナビリティコンサルタントの松沢優希さんだ。環境問題は、人の命に直結する――。そんな使命感を胸に、松沢さんは世界各地で、環境問題の解決に向き合ってきた。
そして、松沢さんが持つもうひとつの顔。それは「働くママ」であるということ。子育てをしながら、自分の信念に従い、働く。決して容易ではないそれを、松沢さんが諦めないのはなぜだろうか?
「才能や能力を活かすこともサステナビリティなんですよ」。松沢さんの人生を通して、サステナブルな生き方に思いを巡らせてみよう。
命と生活にダイレクトに関わる仕事。だからこそ良い循環を生み出すために奔走してきた

松沢:SDGsの広がりとともに、サーキュラー・エコノミーやカーボンニュートラルといった新たな潮流も注目され、企業の取り組みはますます多様化しています。私がしているのは、そういった企業をサポートする仕事です。
たとえば、プラスチック問題の解決に取り組む企業に対して、情報収集やレポーティング、戦略策定支援などをする。大量のごみを排出してしまう工場に対して、それをいかに循環させれば、コストを抑えてリサイクル率を高くできるのか、データを分析して提案する。さらには、一つひとつの企業を直接コンサルティングするだけではなく、資源循環に関わる情報の可視化や共有の仕組みづくりなど、社会全体に資する基盤設計の構想・検証にも取り組んできました。
松沢:この領域は、人の命や生活と直接的に関係があることなんです。
たとえば、途上国で不法投棄されているごみ問題に対し、適切な処理の仕組みを構築することで、そこに含まれる有害物質の環境流出を防ぎ、住民の健康リスクを下げることにつながると考えています。だからこそ、すごくやりがいを覚えます。また、注目度が高まっている領域ということもあって、日々新しい技術が開発されているので、常にワクワクしていますね。
松沢:印象的だったのは、アジアのある国で、廃棄物管理の改善支援をしたときのことです。初めて現地のオープンダンピング場(焼却や衛生的な埋立処分が行われていない、ごみの野積み場)を訪れたときの光景は、今でも忘れられません。
ひどい臭気に加えて虫が大量に発生し、水たまりからはガスがボコボコと湧き出していました。さらに、ごみ収集車が到着すると、周囲に暮らす子どもたちが一斉に走り寄り、ごみの中から食べ物やまだ使えそうなものを探し始めるんです。日本では、まだ食べられるものや使えるものも、当たり前のようにごみとして手放している。それと地続きにあるのがこの光景なのかと思うと、強い衝撃を受けました。