悔しい経験も、残念な思いもする。大事なのはそれを学びにつなげること

松沢:もちろん、あります。アジアのごみ問題の解決のために日本企業が海外のパートナーと技術提携をするような例でいうと、日本側のスケジュール感や慎重さが、現地のスピードや期待と合わず、連携に時間がかかったこともありました。「プロジェクトが実現すれば解決に向かうのに……」と何度悔しい思いをしたことか。
そうした経験を通じて気づかされたのは、理想だけでは前に進まないという現実でした。そもそも、環境・サステナビリティの問題を解決するためには、経済性と両立させないといけないわけです。そうでなければ、その取り組みは持続可能にはなりません。そのためにはイノベーションが欠かせないので、IT技術などのテクノロジーについても勉強しています。
松沢:とても残念ですよね。ただ、そういった社会の反応を観察者として冷静に楽しんでいる自分もいます。新しい価値観が広がるとき、人々の間には戸惑いや抵抗が生まれ、それらを経て少しずつ社会に馴染んでいく。この社会現象という流れに自分がどうアプローチできるのかを考えると、挑戦しがいがあります。
私はいろんな人に「楽しそうに仕事しているね」と言われますが、自分でも自覚があります。

松沢:そうですね。2019年からNewsPicksのプロピッカーとして情報発信していますが、コンサルティングとは違うやりがいを感じます。
コンサルティングはプロジェクトベースで受けるものなので、幅広いことができる一方で、一度に引き受けられる案件には限度があります。だから、社会的に注目されているニュースとはまったく関係のない仕事をしているときもある。そんなとき、プロピッカーとして自分なりの視点を示すことで、コンサルティングとは違った形で社会の問いに向き合う機会を持つことができます。ニュースを自分ごと化しつつ、知見も深められるというイメージですね。
松沢:物事の表面だけを見ないことです。一見、環境に良い取り組みでも、裏側にはなにか別の不都合があるかもしれない。それを含めて分析し、公平に評価することが大事です。
ひとつ例を上げるとすれば、「生分解性プラスチック」というものがあります。これは自然環境で分解されるプラスチックで、海洋汚染などの環境負荷を減らす対策として注目されていますが、デメリットもあるんです。日本はプラスチック循環の仕組みが整っているので、リサイクルもできている。でも、そのプロセスに生分解性プラスチックを混ぜてしまうと、リサイクルを阻害する可能性があると指摘されています。だから、あれもこれも生分解性プラスチックにすればいいというわけでもないのです。使用を広げる際には、環境中に流出するリスクが高い用途などに限定するなど、総合的に考えなければいけません。
こんな風に、プラスに見える物事の裏側もしっかり分析して伝えることが、私に求められている役割だと思っています。