小さな「好き」を集めていくことで、自分らしさを知った

画像: ▲お店には、前田さんと交流のある山中タイキさん作のデザイン画が飾られている

▲お店には、前田さんと交流のある山中タイキさん作のデザイン画が飾られている

――「好きなことを仕事にする人生」に興味を持った前田さんは、まずどんなアクションを取ったのでしょうか。

前田:じつは最初は、肝心な「自分の好きなこと」がよくわかっていなくて。振り返れば、それまでは「会社で出会った仕事をまっとうしよう」「アナウンサーにふさわしい自分であろう」などと、周りの判断を軸にした社会人人生を生きていました。改めて「なんでも自分の好きなことができるなら?」と考えても何がしたいのかわからないくらい、自分のことが見えていなかったんですね。

だからまずは、ちょっとでも「好きだな」とか「楽しい」と思うことを、いろいろと深めてみました。食べることが好きだから料理を習ってみたり、体を動かすことが好きだからヨガをはじめ、インストラクターの資格を取得してみたり……ただ、楽しいし当時の自分にとって必要な時間ではあったけれど、どれも一生の仕事にしたいとまでは思えなかった。そんななかで、お花にまつわることだけは長く続いたんです。

――もともと、お花のどんなところがお好きだったんでしょうか。

前田:アナウンサーの仕事が忙しい時期、一輪の花を家に飾るだけで、すごく癒されていたんです。どんなに疲れて帰っても、季節のお花が出迎えてくれるだけで、パワーがもらえる気もした。だんだんとガーデニングやアレンジメントにものめりこみ、花との接点が増えるごとに、自分が満たされていく感覚をおぼえました。

小さな「好き」を集めていくうちに、自分のことが見えてきたんだと思います。

画像: 小さな「好き」を集めていくことで、自分らしさを知った
――「お花が好き」から「一生の仕事にしたい」と思うまでには、どんな経緯がありましたか?

前田:32歳でテレビ朝日を退職してすぐ、英コッツウォルズにあるガーデナーのインターンに応募しました。立派な古城で、8つもある広い庭を管理する仕事の見習いです。重い土を運んだり、ホースで水やりをしたり、泥だらけになって走りまわる力仕事で大変でしたが、それ以上に楽しかったですね。

アナウンサーとして期待に応えるために張りつめていた自分と、自然にふれることをただ喜び、スッピンで土まみれになり笑っている自分。どちらのほうが自分らしいか考えれば、答えは明白でした。お花にかかわる仕事を一生続けていきたいとはっきり思ったのは、そのときだった気がします。

――ということは、花の仕事をすると決心が固まるよりも先に、アナウンサーを辞めたということですか……!?

前田:そうですね(笑)。花が好きな気持ちは本物だったけど、仕事にするとどうなるか、あまりイメージがついていなかったんです。実情を知らないから、夢のように憧れているだけかもしれない。でも不器用だから、アナウンサーとしていろいろなものを背負ったままでは次に進めません。だから、手をからっぽにした状態で正面から花とふれあい、どんな気持ちになるかを確かめてみたかったんだと思います。

――すごい決心ですね……! 安定した仕事を手放すためらいはなかったのでしょうか。

前田:もちろん不安はありました。新卒で入った会社だったし、社会保障や収入などを考えても、会社員でいたほうが安心できる。でもその不安より、新しい人生を自分でつくってみたいという気持ちのほうが上回ったように思います。

それはやはり、アナウンサーとして働くなかで出会った、たくさんの素敵な人々のおかげです。いろんなかたちで自分の「好き」を実現している人たちが、私の背中を押してくれました。

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