他者の声を聞きながら、自分の「おもしろい」を続けていく

DJ Nobby:そういうものは「どうやって始めたらいいですか」と人に聞くよりも先に、自然とやってしまうんだと思います。自分に合っていておもしろいと思うなら、おのずと続けられる。僕は番組をずっと続けているせいか「継続力がある人間だ」というイメージを持たれがちですが、僕はおもしろいから続けられているだけです。
DJ Nobby:はい。でも一方で、しんどい時期があっても、それを乗り越えるとまた別のおもしろさに出会えます。
僕の例で考えると、会社員のほうは、金融のことが何もわからずもがいていた時期や、リーマンショックにあおられてやりたくない仕事をやらないといけない時期もあった。パーソナリティのほうも、思うように聞いてもらえない時期があった。それでも続けたからこそ、それを乗り越えた先に得られる信頼や、おもしろさがあると今は感じています。
DJ Nobby:「あいつが言うんだったらこのニュースはチェックしとこう」「ここだけ聞いたら大丈夫だな」と思ってもらえる番組を作りたい。僕自身の言うことを聞いてほしいというよりは、僕が選んだものを聞いてほしいという気持ちの方が強いですね。他の音声配信で聞かれ続けている番組のパーソナリティも、自分のことを語っているように見えて、自分以外のトピックに軸がある。僕も「僕が選んだ大事なニュースはこれです」というところを価値にしたいと思っています。
その前提の上で……最近「僕」の部分も出さないといけないなという思いも抱いています。ちょっとずつ自分に求められるものが変化して、だんだんリスナーの興味が僕自身に向いてきている気がして。「どういう生活してるん?」とか「何者なん?」とか。
DJ Nobby:仕事のいただき方にもニーズの変化を感じていて、それによって自分が変わっていく気配がします。2024年までは、自分から「こんなことできます」と発信してお仕事を開拓していましたが、2025年には思いもよらないところからお仕事をいただくケースが増えてきたんです。

その代表例が絵本の出版です。出版社の社長さんがリスナーで「子どもの学びになる絵本のシリーズを作りたい」とお話をいただいた。そんな面白い話があるんだったらやります!とお話を受けました。制作過程で「たしかに子どもの視点ってこうだな」と新鮮な学びを得られましたし、絵本製作を公表したら中学校や高校から講演依頼がくるようになって、これも思わぬお仕事でしたね。そうか、金融教育ってこういう広がりがあるのかと面白かったです。
いただいたご提案が、意外と自分にフィットした。こういうことが度々起こるので、お受けできる範囲で今後もチャレンジしてみたいです。「有名になる」ことには、さほど興味はありません。他者の声を聞きつつ、自分がおもしろいから続けていくものが、届くべき範囲に届いてくれればそれでいいなと思います。

DJ Nobby(福永 信彦)
シティバンクにてリテールセールス、外国為替ディーラー、信用リスク管理などの業務を担当。その後大手金融取引所にて取引所 FX 市場の市場運営や上場企画等に従事。さらにプルデンシャル生命ほか生命保険会社にてコンプライアンスリスク分析業務のマネージャーとしてチームをリードするなど、金融三分野を熟知。高校在学中よりラジオパーソナリティ DJ Nobby として活動、ミュージシャンとの深い繋がりに加え、番組やイベントプロデュース、各種 MC などの経験を通じて音楽・ラジオ業界に精通。
執筆:紡もえ 撮影:梶礼哉