「私どうなってしまうんやろ」というスリルが面白い。自分を信用して“枠”からはみ出す

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―― 難しいことを心底楽しんで生きる二葉さんが素敵です。『桂二葉チャレンジ』と称して大先輩の師匠方に挑む企画など、人によっては胃が痛くなるような挑戦もされています。不安や怖さはないですか……?

二葉:それがむしろ楽しい。スリルがすごいんですよ。「無理かもしれへん。どないしょ……!」って頭抱えながらもがくのが、割と好き。数年前には『らくだ』という1時間もある大ネタに挑戦することになって。しかもラジオの公開生放送で初演。ただでさえ難しいネタやのに、とんでもない状況。でもみんなが注目してくれるんちゃうかな、ちょっといけそうやなって思って頑張ってみたんです。ほんならやっぱりみんな「こいつ『らくだ』やるって言うてんで、あほちゃうか」って面白がってくれて。やり遂げた後は自分でも「ようやった!」って思って、なんか背筋ピン!って伸びるようなすがすがしい気持ちでした。もう最高やった。

賞レースの前も公園で公開稽古してました。「冷やかしにきてください」ってSNSで投稿したら50人くらい集まってくれはって。審査員の師匠たちの顔写真を拡大印刷した紙を持ってもらって、「あかんときこの顔出してくださいね」ってお願いして、みんなで真剣に遊んでました。

私がいろいろ挑戦するのは、「どうなるんやろう」って自分のことを面白がりたいし、周りから「こいつどないなっていくんや」って面白がられたいからなんやと思います。

―― お客さんと遊んでいる姿が思い浮かんで笑顔になってしまいました。どうなるかわからない自分を面白がりつつ、「こうありたい」と思う理想像はありますか?

二葉:私の場合は、今は憎たらしい子どもの役とかあほな人の役が照準を合わせやすい。自分と一緒やなと思うから、ほんまの気持ちでやれます。もっと若い時は逆に女の人やるのんが苦手で、歳を重ねてからやっとやれるようになってきた。年齢を重ねると、得意不得意も変化していってまた違った面白さがどんどんでてくるんやなって。逆に、できなくなる役もあるんかなとかね。自分でもまだわからへんけど、そんな変化も楽しみ。

私はまだまだ捉われているところがある。お味噌汁の具はお豆腐とおあげさんや、みたいな。トマトとかパンとか、自由に入れたっていいじゃないですか。ほんでそれが、今までの具よりおいしいかもしれん。自分を信用して、今まで「これや」と思っていた枠からはみ出してみたいです。

―― これからの二葉さんの落語が楽しみです。最後に、二葉さんにとって「自分らしくはたらき、生きる」とは。
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二葉:真面目にあほをやるってことですかね。とっても真面目に。言葉にすると余計にあほっぽくてええね。私、真剣にあほをやれるから落語がめっちゃ好きなんですよ。誰にも教えたくないぐらい、めちゃくちゃええもん見つけたなと思ってる。小さい頃に憧れたあほがやれてるやんって。

こないだ、狂言の舞台を観に行ったら、ご高齢の狂言師さんが点滴つないで出てきはったんですよ。もう息絶えてしまいそうで、「やめといたほうがええんちゃう!?」っていう状態。でもびっくりするくらい大きい声でしゃべってはって。会場は“心配”の雰囲気が漂ってたけど、私は笑ってもうて、「どんだけ舞台が好きやねん!めちゃくちゃかっこええな」って。上手い下手とかもうそういうことじゃない。「ほんまにこれが好きでずっとやりたいんや」って姿がたまらんほど素敵でした。

私も90歳になってもずっと高座でしゃべり続けたい。私が点滴つないで高座に出てきたら、笑ろてくださいね。

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画像: 「誰にも教えたくないくらい、ええもんみつけた」。落語家・桂二葉さんが心酔する“あほ”をやりぬく人生

桂 二葉

大阪府大阪市東住吉区 出身。中1の1年だけバレーボール部。東大阪の女子高、京都橘大学文学部卒業。スーパーマーケット青果部正社員を経て、2011年(平成23年)3月9日、桂米二に入門。入門時アフロヘアー現在マッシュルームカットとトレードマークである高い声で自称「上方落語界の白木みのる」と銘打つ。

執筆:紡もえ 撮影:梶礼哉

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