「肩書」とはとても便利なもの。しかし、ときにそれは生き方に縛りを与え、人を不自由にもしてしまう。その縛りから解き放たれ、“何者でもない自分” を「余白」と捉えることで、世界を広げ続ける人がいる。今回のミモザなひと、山中タイキさんだ。

神奈川県・逗子を生活の拠点として、FM局のラジオパーソナリティ、ナレーション、イベントの司会などの「声」の仕事に加え、自身で絵本レーベルを主催し、イラストも描く。そんな活動ぶりを「流れに乗っただけです」と、山中さんはナチュラルに笑う。

誰かの生き方や世間の考え方にとらわれず、興味の赴くまま、余白から未来を描く彼の姿は、すきまを埋め尽くしがちな現代に生きる私たちに、ふと立ち止まるきっかけを与えてくれるのではないだろうか。



人前で喋るのが苦手な少年が、ラジオのパーソナリティに

画像1: 人前で喋るのが苦手な少年が、ラジオのパーソナリティに
――山中さんは、ラジオ、イラスト、絵本レーベルを主宰されるなど、多方面で活動されていらっしゃいますよね。

山中:そうですね。いまは、定期的にJ-WAVEの収録番組やラジオCMのナレーション、そのほか細々としたラジオ関連のスポット的なお仕事をしたり、イベントの司会もやったり……いわゆる「声の仕事」をしています。

それと並行して、イラストを描いたり、自分がやっている絵本レーベル「yackyackbooks」の絵本作りなどをしたり、という感じです。

――本当に多彩な顔をお持ちですね。初対面の方には、どんなふうに自己紹介するんでしょうか?

山中:初対面どころか、毎年集合する高校の同級生からも「タイキって何やってるの?」って聞かれるんですけど、僕自身もよくわかっていない(笑)。今後もどうなるかわからないので、「いまはこういう仕事をしてる」としか言えないんですよね。

ラジオのパーソナリティの仕事は番組の継続次第ですし、喋る仕事も、絵を描く仕事も、絵本を作る仕事も、また来年は同じことをできるかどうかわからないところがあるので。

「肩書きは?」と聞かれれたら、“山中タイキです”と(笑)。名刺は持っていますが、あえて肩書きは抜いています。

――少し前に、このミモザマガジンに出演いただいた 前田有紀 さんから、フラワーショップ「gui」のラッピングペーパーのデザインを、山中さんにお願いしたと伺いました。
画像: ▲前田有紀さんが2025年4月にオープンしたフラワーショップ「gui」では、お花を包むラッピングペーパーに山中さんのデザインを採用している。

▲前田有紀さんが2025年4月にオープンしたフラワーショップ「gui」では、お花を包むラッピングペーパーに山中さんのデザインを採用している。

 

山中:そうなんです。僕は数年前に都内から逗子に移住しましたが、有紀さんとは不思議なご縁がありました。

2024年末から今年(2025年)の2月まで、鎌倉にあるケーキ屋さんで作品を展示させていただいていますが、そのお店に有紀さんもよく通われていたそうで。展示を見に来てくださったことがきっかけで、仲良くさせていただいています。実は、僕はそれ以前にも都内の花屋さんで修行されている有紀さんの姿を見かけたこともありました。

僕からすると最初は「テレビの人だ!」なんですけど、たまたま有紀さんも僕のラジオ番組を聴いてくださっていました。そんなご縁でやりとりさせていただくようになり、「絵を描かれるなら、デザインもできますか?」とご依頼いただいたんです。

画像2: 人前で喋るのが苦手な少年が、ラジオのパーソナリティに
――お互い、テレビ・ラジオ番組越しに知っていたんですね。

山中:僕は以前、早朝の生放送の番組をやっていましたし、花屋さんも朝がとても早いですよね。有紀さんも、仕込みの時間帯にちょうどよかったらしく、聴いていたんだそうです。

有紀さん以外にも、ラジオがきっかけで、花屋さん、パン屋さんなど、朝が早い職業の方とのご縁がたくさん生まれました。僕はスタジオの中で一人でしゃべっているから孤独なんですが(笑)、その先には聴いてくださっている方がいるんだなって。こういうラジオからのつながりは、今後も大切にしていきたいですね。

――インタビュアーとしては、ラジオパーソナリティの方の話の上手さに憧れます。

山中:いやいや、じつはそうでもなくて!僕は昔から人前でしゃべることが苦手でしたし、今でも「フリートークしてくれ」と言われたら厳しいかも……。

それでもラジオの仕事が好きだと思うのは、その番組にしかない“空気”が作りだせるからなんです。

――というのは?

山中:ラジオ番組には、その日のトピックがあって、音楽があって、エンターテインメントの要素もあって……パーソナリティをやっているときは、僕が生み出すというよりも、ひとつ一つの要素を“繋いでいく”っていう感覚で喋っています。

その"繋ぎ"の中で、自分の言葉選びが番組の空気感を作っていくから、そこがまた面白いなぁと思って。僕は主役じゃなくて「繋いで、届ける」っていう感覚でやっています。

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