本音を伝えることは、自分を大切にすること。女性たちと出会い世界を変えていく

▲はやまりさんにとって「自分らしく働き、生きる』とは、「幸せになるための最良の手段」
坡山:そう、自分らしく働くって幸せになるための最良の手段なはずなのに、20代のときの自分は、男性目線で作られたルールや慣習に違和感はありながらも、無意識に順応しようとしていました。女性らしい格好をしていると男性と対等に話してもらえないかもしれないと思い、パンツスーツを買いそろえたこともあります。自分の好きな服装をして幸せなら本当はそれでいいはずなのに。
私と同じような思いをした方が少なくないことや、友人がセクハラを受けて悩んでいると知ったときに初めて「誰かが変えないとヤバい」と思ったんです。嫌なことを嫌だとちゃんと言わないと、また同じ思いをする女性が出てきてしまう。
それに今後自分が結婚や出産をする可能性を考えると、未だに男性の育休取得が難しいことや、女性が何かしらのキャリアを諦めざるを得ない現状もリアルに感じられてきて。私たちは、ただ仕事がしたいだけ。でも今は女性特有のいろいろな制約や障害があって、マイナススタートになっていると思います。
坡山:過去の自分に会えるなら、「なにしてんねん、イヤって言っていいよ!おかしいよ!」って伝えたいです。あの頃も、同じことを友達がされたら嫌だって気持ちはあったんです。友達にさせたくない無理を、自分にはさせていた。自分の人生を豊かにするのは自分なのに。
でも、同時に仕方がなかったとも感じます。嫌だと思う感情に向き合うことは怖かったし、思ったことを口にしても押し負けそうな気がしていました。今はその気持ちと闘えるくらい強くなったけど、怖さを感じる瞬間もやっぱりあります。
坡山:怖いです。周りの人がどう思うかをすごく気にします。『Project:F』のホームページに載せるステートメントを考えた時も、批判されるんじゃないかという気持ちを抱えながら何度も何度も書き直しました。

『Project:F』のステートメント
コピーライターさんに、「これは本音?」「嘘はない?」と聞いてもらいながら議論を重ねて。本当に伝えたい気持ちをさらけ出して、10年先も同じように思い続けられるメッセージを世に出しました。
自分をさらけ出したからこそ反応は怖かったですが、「ノーガード戦法だ!」と奮い立たせていました。結果、共感した方々が起業家育成プログラムに参加してくれた。ちゃんと届いたんです。これからも、怖さを抱えながらも恐れずに発信して進んでいきたい。思ったことをちゃんと伝えることが、自分を大切にすることでもあると思うから。

坡山:やりたいことを見つけるための時間を作ってください。「何をしているときが一番幸せ?それはなぜ?」って、5回くらい自分に問いかけてみてほしいです。幸せなことや好きなことの中に、本音が眠っていると思うから。
私も起業する夢はありましたが、初めからやりたいことがあったわけではなかったです。自分の道筋が定まるまでに、自分会議をたくさんして自己理解に時間を使いました。そして、いい出会いに恵まれるために自分磨きを続けて、出会った人たちからヒントをいただいてきました。
坡山:「私にはできない」と自信が持てない人もいるかもしれません。そんな人は、ひとりじゃないことを忘れないでほしい。みんなとやれば、大丈夫。「私はできる」と信じてあげて、同じく自分を変えたい、自分の周りの世界を変えたいと願う人たちと一緒に進んでいきましょう。
女性がそれぞれの幸せを叶えるために働き、生きられる世界へ。それが実現できるように、これからも誰かの人生や世界を変える“いい出会い”を生み出し続けたいです。できるだけたくさん。終わりのない挑戦ですが、終わりがあったらつまらないですよね。だから、私が続きを作って終わらせない。いつかルールメイクする何千人の女性たちと集まって語り合いたい。みんなが笑い合う中で、「よかったねー!」とニコニコ顔で言っている自分でありたいです。


坡山里帆
2016年、株式会社サイバーエージェントにて内定者時代に新規事業の立ち上げに参画。17年、同社へ新卒入社後、ABEMA開発局にてプランナーを経験。18年11月より、藤田ファンド担当者として投資業に従事し、4年半でタイミーやROXXなど約20社のスタートアップに対し約30億円の投資を実行。23年3月に同社を退社し、株式会社Sworkersを創業。24年10月より、優れた女性起業家を世に送り出し、女性がルールメイクする組織が日本に広がる世界を実現するべく「ルールをつくる女性を、ふやす。『Project:F』」を始動。
執筆:紡もえ 撮影:梶礼哉