自分には、「Z世代」というアドバンテージがあった
今瀧:確かに、もともと関心があったわけではありません。でも、2020年当時にいまから会社をつくるなら何をするのがよいかと考えたとき、条件は「オンラインで成り立つ事業であること」「自分自身に優位性があること」の2つだなと思いました。コロナ禍でもありましたからね。
そこで出てきたのが「Z世代」というキーワードです。マッキンゼーの定義によると、Z世代とは「1996-2012年に生まれた若い世代」を指しているんですね。僕は1997年生まれだから、Z世代の先輩は1学年上の人たちだけで、後輩のほとんどは学生です。Z世代というくくりなら、社会人としての経験がわずかな自分でも有利に戦えると感じ、「Z世代マーケティング」を打ち出しました。
今瀧:単純に、自分も友達もZ世代だから、Z世代向けの商品を考えていくのが楽しいっていう理由もありますよ。ほしいものややりたいものを提案していくなかで、クライアントから「その発想はなかった」「面白いね」などと言っていただけると、企画屋としてのやりがいも感じます。SNSネイティブ世代の第一号として、これまでの人生でさまざまなインプットがあったから、すばやくアウトプットに移れたのもラッキーでした。
今瀧:気持ちとしてはまだ副業で続けるつもりでしたが、一緒に働いていたメンバーたちが勤めていた会社を辞め、続々と「僕と私と」を本業にしはじめて……社長がいつまでも副業ではまずいかな、と(笑)。それに、自分の事業に集中したほうが成長も早いだろうと思いました。
今瀧:効率的に成長するための要素って、優秀な人と関わる機会がどれだけ多いか、だと思うんです。大きな企業の一社員として働くより、代表の名刺を持ってフットワーク軽く動ける自分の会社のほうが、その機会が増やせると感じました。それに、事業に責任を持たないといけない状況も、仕事をより自分事としてとらえるためにはいいですよね。
今瀧:そのとおりです。そもそもの出発点が「周りの人を幸せにするために“教育”がやりたい」だったので、組織運営でもメンバーを幸せにするため、自分なりに努力しているところですね。eNPS (Employee Net Promoter Score※)のアンケートを定期的に取っていて、その指標をよくすることに数値目標を持っています。
※eNPS:従業員エンゲージメント。職場に対する、従業員の信頼度・愛着度を示す指標。
大切にしているのは、一人ひとりが自分らしさを発揮できる環境。学校現場のクラス運営の考え方や、幸福度が高い北欧の働き方などを参考にしています。気になる理論を試してみる実験みたいな組織運営ですが、ここまでの事業は右肩上がりで成長しているし、従業員満足度も高い状態が保てていますね。メンバーは毎日好きな時間で上がっていて、「仕事が終わらないから今日は飲みに行けない」なんて断わっているのは見たことがない。そのうえで、毎年1億円は新規事業に投資するだけの余力が持てている……。だからいまのところは、目の前の人を幸せにすることは、経済活動にもよい相関関係があると言えそうです。
今瀧:いまは「急がば回れ」。目の前の事業に取り組むなかで、自分が教育に関わるためのルートが見えてくると信じています。たとえば、これまで「同世代向けマーケティング」としてZ世代に向き合ってきましたが、あと数年もすれば、同世代が親になりはじめるタイミングが来るでしょう。そうすると、これまではまだ早かった育児など、「家での教育」にアプローチできる土壌が生まれるんです。しばらくはそうした事業に取り組みながら場数を踏み、会社を大きくして手札を増やすことに注力するフェーズだと思っています。