「明日も生きる」と思うから、今日好きなことができる

画像: 「明日も生きる」と思うから、今日好きなことができる
―「誰でもいつかは死が訪れる」ということを普段から意識している人は少ないかもしれません。幡野さんはがんと診断されたからこそ、ご自身の“死”を意識されたのですよね。

幡野:よく「今日が人生最後の日だと思って一生懸命生きなさい」といわれますよね。でも、本当に最後の日だとしたら、頑張れるわけないです。落ち込みます。

実際は逆で、「明日も生きていられる」と思うから、今日も一日、楽しく生きられるんです。そうじゃなきゃ心が耐えられないでしょう。僕だって、明日も生きると思っていますから。そうじゃなきゃ、人生最後の今日に、こうしてインタビューなんて受けてないですよ(笑)

―確かに……。

幡野:気楽にのんきに、でいいんじゃないですか。ただ、死を意識することで、「嫌な人とは付き合わない」「好きなことをして生きる」「お金はあの世に持っていけない」「いろいろな経験がしたい」と考えるようになるので、そういったことは健康なうちから意識したほうがいいんじゃないかと思います。

健康な人ほど、自分の好きなように生きたほうがいいですよね。だって、体の自由がきくんだから。老後に海外旅行に行くのもいいですが、若いうちにお金も時間もかけたほうが、いろいろなことが経験できると思いますよ。

今日、好きなことをして、好きな人と会い、何でもやってみたらいい。「明日も生きられる」でいいんです。

―幡野さんご自身は、「人生」というものをどのように捉えていますか。

幡野:それは、幸せに生きることですよね。誰も、不幸になりたくはない。人生の意味というよりも、目標に近いかもしれないけど。幸せって人によって価値観が全然違う。僕の幸せとあなたの幸せはまったく別もので、自分の幸せを追求することが目標になると思います。だから、自分の価値観を人に押し付けちゃいけないし、他人の価値観に染められるのも違うんですよ。

―あくまで自分の価値観で幸せを追求する、と。がんになったことで幡野さんにとっての幸せは変わりましたか?

幡野:今のところ、変わらない。変わらないというよりも、より色濃くなっていきます。

好きなことをする、好きな仕事をする、好きな趣味に没頭する、好きな人と一緒にいる、好きなものを食べる、飲む。

逆を考えてみてください。嫌なことをする、嫌な仕事をする、つまらないと思うことをする、嫌な人といる、嫌いなものを食べる、飲む……。

―想像するだけでも最悪ですね……。

幡野:ですよね。だから好きなことをする。健康なときはがまんして嫌な仕事をしたりもしていましたけど、病気になってまで嫌な仕事はしたくなかったから、僕はもうしません。したい人はどうぞ、って言う感じ。

みんな自分なりの幸せを持っていればそれでいいんだけど、一つ言えるのは、幸せのハードルを下げた方がいいですよ、ということ。

お酒飲んで好きなもの食べて、そのまま寝るとき、僕は「あぁ、幸せだなぁ」と思います。春、気持ちいい陽気の日なんて、それだけですごく幸せですよね。

自分を不幸だと思っている人が望む幸せほど、ハードルが高い気がします。「大きな仕事をする」「大金持ちになる」「すごい人と結婚する」「子どもを有名大学に入れる」とか。「晴れた日が好き」くらいハードルを下げておくと、それだけで幸せに生きられますから。

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