頼り合いながら、信じる未来へみんなで進んでいく

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―辻さんご自身は、「ひとりじゃない」と感じる瞬間はありますか?

辻:たくさんあります!……といってもその感覚が明確になったのは結構最近かな。実はコロナ禍で社会が揺れ始めた2019年頃は「社会に違和感を感じたら自分が戦わなきゃ」みたいな気持ちがあったんですよ。でも世界で起こるすべての問題を追うことはできないし、自分自身がしんどくて発信がままならないこともあったりして。

そんな時、同じように違和感を見逃さず発信している他者の存在がすごく心強かった。一緒に戦ってくれる人がいる。ひとりじゃないと感じたことで「自分が強くあらねば」という感覚から少しずつ解き放たれたと思います。“持ち回り制”でみんなで頑張っているなという気持ちです。

実はいま書籍出版の準備をしていて、執筆にあたり自分を振り返ってみる中で、自分自身について発信することにはあまりモチベーションが湧かないタイプなんだなと気づきました。私が発信してきたのは、誰かが痛みを負っていることや社会に対する自分の考えなんです。社会を変えるための「媒介」としての意識が強いのかもしれません。だから、例えばジェンダーの問題に関する発信は世間的に増えているので、みんなが発信してくれるなら…と、私は別のトピックに挑もうかなと考えたりする。もちろんジェンダーに関する課題感はルーツとして持ち続けています。

発信するという行為が、私をひとりじゃなくさせているとも感じます。同じ課題意識を持つ仲間に出会いやすくなったから。誹謗中傷や乱暴なメッセージが来ることも時にはありますけどね。でも乱暴になってしまう背景には、たぶんその人なりの生きづらさがあるんだと思います。それが和らいだらこれ以上他の人に嫌なことはしないんじゃないかと思うし、同じ時代に生きる者として、そういう人にも少しでも幸せでいてほしいなと願っています。

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―嫌なことを言ってきた人に対して、そのように優しい目を持つのは難しいように思います……。

辻:されたこと自体はまったく肯定できないですよ(笑)。絶対に許せないって思うことももちろんあります。でもできれば未来に希望があるほうを自分で選びたい。もともと、人生にしても気持ちにしても、「自分で決める」ということを何より大事にしているからかもしれません。

例えば今経営している株式会社arcaは、以前所属していた会社の子会社として立ち上げたのが始まりなのですが、親会社から独立させたのは、自分が作った会社で意思決定権をちゃんと持ちたいという思いからでした。もっと日常的なことだと、嫌なことがあって感情がマイナスに傾きそうになる時は「私の機嫌返して!」っていう意志を持って、自分で気持ちを持ち直す。自分の機嫌は自分で取りたいなと。「信じること」も意志だと思っています。目の前の人の様子や今の社会が信じられるものかどうかではなくて、自分が信じたいと思うかどうか。傷つくこともあるかもしれないけれど、良い方向に変わっていけると信じたいです。私自身も、他者も、社会も。

―辻さんはご自分の「信じる」未来のために、これからも歩み続けていくのですね。

辻:そう、これからも「ひとりじゃない」と信じられる声を少しでも届けられたらなと思います。自分の手でハンドリングできないことに振り回されたり、勝手に天秤にかけられて良し悪しを比較されたり……人生に陰りが落ちる時期は誰にでもある。そんな孤独な時間の励ましになるような声を、同じ時代を生きるひとりとして発信したいし、分かち合いたい。

そしてみんなで連帯して、幸せの総量を増やしていきたいです。資本主義の社会だと、自分のポジションを確立しようと競ってしまいがちじゃないですか。「この領域で一番のオピニオンリーダーは?」とか。でも今は席を奪い合っている場合じゃない。それぞれの違いを受け止めて、連帯するからできることがきっとある。「人類みな応援」の精神でエールを送り合える未来を、私は望みます。

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画像: 社会課題に向き合うことは、「ひとりじゃないよ」と伝えること。辻愛沙子さんの “みえない痛み”への寄り添い方

辻 愛沙子(つじ あさこ)

株式会社arca代表取締役/クリエイティブディレクター。社会派クリエイティブを掲げ、「思想と社会性のある事業作り」と「世界観に拘る作品作り」の二つを軸として広告から商品プロデュースまで領域を問わず手がける越境クリエイター。リアルイベント、商品企画、ブランドプロデュースまで、幅広いジャンルでクリエイティブディレクションを手がける。2019年春、女性のエンパワメントやヘルスケアをテーマとした「Ladyknows」プロジェクトを発足。2019年~2024年、報道番組 news zero にて水曜パートナーとしてレギュラー出演し、作り手と発信者の両軸で社会課題へのアプローチに挑戦している。

取材・執筆:紡もえ
編集:山口真央
写真:梶 礼哉

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