あなたも私も、外からみえない痛みをもっている

画像: あなたも私も、外からみえない痛みをもっている
―可能性を求めて飛び込んだ海外の学校生活はいかがでしたか?

辻:寮生活の中で、同じ年代、同じ人種や同じ所属でも、それぞれ違う人なんだということを感じる毎日でした。言語、セクシャリティ、宗教、文化……ひとりひとりにそれぞれの当たり前があって、自分が知らない痛みや価値観、生き方が、自分の外には無限にあるのだと知ることができました。この経験もあって、個々の“人”と向き合いたい、人の痛みを可能な限り知って自分にできることをしたいという気持ちが強くなったと思います。

―異なる価値観に触れた経験が、他者への想像力につながっていると。

辻:自分も外からみえない痛みを持っているから、ということもあると思います。私はもともと右の耳が聞こえない、片耳難聴です。左は聞こえているので会話はできるし、日常生活への支障はさほどない。

でも、例えば「news zero」の生放送中、速報や進行変更の指示がイヤホンから流れてきます。両耳が聞こえれば、片方で指示を受けてもう片方でスタジオの会話を聞いて反応することができますが、私はそれができない。状況にあわせてイヤホンを付けたり外したりしなければならないので、大変だなと思うときもありました。でも右耳が聞こえないなんて一見分からないから、私が助けを求めない限り気づかれにくい。

そういう経験もあって、みんな何かしら「みえないなにか」を持っているんだろうなと想像するのかもしれません。

―自分だけでなく、他者の痛みに働きかける姿勢が印象的です。辻さんは社会課題に関する発信を続けていますね。例えば代表をされている「Ladyknows」プロジェクトでは、女性を取り巻く社会の不均衡について発信していますし、SNSでは「共同親権」への反対や同性婚への賛同などご自身のスタンスを表明されています。そういった発信をされているのも同じ気持ちからでしょうか?

辻:そうですね。社会問題に向き合うって、遠くで起こっている大きなものと戦うイメージを持たれることがありますが、私自身はもっと近くの人と励まし合っている感覚なんです。

実は私、集団行動が本当に苦手なんです。特に子どものころは、いつもここじゃない場所に自分の居場所があるような感覚がずっとありました。だから比較的強い孤独感を持って生きてきたと思っています。それもあって、「あなたはひとりじゃない」というメッセージが必要な人に寄り添いたい、エンパワメントしたいという思いが強い気がします。

みんなそれぞれ生きづらさや自分の弱さを抱えながら、社会と戦っている。戦う日々の中で、今つらい思いをしている人が、「私はひとりじゃない」と感じてくれたらいいなと思って発信しています。

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