関わる人の「生活」と「技」を未来につなぐために。女将としての想い

画像: 関わる人の「生活」と「技」を未来につなぐために。女将としての想い
―お話を伺っていて、大西さんは周りの人や地域などとの「つながり」を大事なポイントにされているのかなと感じます。

大西:そうかもしれないですね。そうそう、扇子づくりもつながりやわ。京扇子は竹工程・紙工程・それらを合体させる工程の大きく3つに分かれていて、それぞれを担う職人さんたちの「技をつないでいくこと」で出来上がるんです。各工程の中でも細分化されていて、全体で87の工程があります。

大西常商店の主な役割はその全体の統括、工程管理です。扇子を卸すお客さまのニーズを商品イメージに落とし込むことから始まり、職人さんたちの工程管理をして、検品をしてお届けする。

だから職人さんとのつながりは扇子づくりの要と言えるし、とても大事にしていますね。用事がなくても顔を見せに行ったり、「体調どう?」「こないだ病気してたやんか、大丈夫?」って連絡したり。80代以上のご高齢の方が多いので、ここでも孫みたいに可愛がってもらっています。

―そんな職人さんの生活を支えるため、家業に入ったばかりのころに“ある挑戦” をしたと伺いました。

大西:そうなんです。扇子は季節商品で、4月から8月までの売上が全体の約8割を占めます。冬はほとんど売れない時期があって、扇子一本で生きている職人さんたちの懐は安定しません。私は当時会社を辞めて実家に帰ってきたばかりで、お店の経営状況がよくわからないながらも、「このままでは職人さんの生活も、技の伝承も支えられない……」という危機感を抱きました。

何か策を講じたいと思い注目したのが、扇子の竹の部分が持つ「保香性」でした。この特徴を活かせば、季節を問わず職人さんに仕事が依頼できるかもしれないなと。まずは「上手くいくか分からないけれど、やらせてほしい」と先代である父を説得し、試行錯誤してルームフレグランスという形に辿り着きました。通年、しかも家の中で楽しめる商品が生み出せたことは自信になりましたし、コロナ禍に自宅で過ごす時間が増えたことで結果として多くのお客さまに手に取っていただけたことは大きかったです。

画像: ▲大西さんの挑戦が形になったルームフレグランス「かざ」

▲大西さんの挑戦が形になったルームフレグランス「かざ」

―伝統の技をつなぎたいという想いを具現化されたと。これまでにない取り組みに対して、お父さまや職人さんたちからは戸惑いの声もあったのではないでしょうか?

大西:うちの父は何を始めるのかよくわかっていなかったようです(笑)。職人さんも「なんかようわからんけど、頑張るんやったら手伝ってあげるわ」って感じでしたね。私が跡取り娘として扇子の業界に帰ってくること自体を喜ばしく思ってくださって、孫のように後押ししてくれたんかなと思います。


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