「誰かのため」に働く。それが上手くいくコツ

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――最近では、旧銀行の跡地を活用した食の複合ショップである「BANK(バンク)※」を手掛けたり、化粧品会社とコラボしたりと、パティシエの枠を越えた活躍をされていますね。

※BANK……「ベーカリー」、「ビストロ」、「カフェ・バー」、「インテリアショップ」、「フラワーショップ」が一つになった複合ショップ。全体のプロデュースを大山さんが担当。銀行として使われていた場所をリノベーションし、温かみのある空間を作り上げた。

大山:楽しいですしやりがいも感じています。一方で、ひとりのパティシエとして納得できる100点のお菓子を追求していきたいという願望もあるのが正直なところです。

ただ、自分は経営者として、若手のパティシエを守っていかなければいけない立場でもある。お菓子屋さんって一店舗だけでやっていると、どうしても労働環境が悪くなりがちです。一般的な会社員のみなさんが体を休めている早朝や深夜、あるいは休日も、仕込みなんかがあるから働かなければいけないですし、イベントがあるときは書き入れ時だからこそ休めない。利益も、ひとつひとつのお菓子からはとても少ない。それを改善していくためには、会社を大きくする必要があります。そのためにまずは、ブランド価値を高めていく。だから、パティシエ以外の領域でもできることをやっていますね。

――こうしてインタビューを受けるのもブランド価値を高める一環ということでしょうか?

大山:そうですね。実は取材をお断りすることも少なくないんです。ぼく自身が注目されたいという気持ちはないので。でも、「ミモザマガジン」さんという媒体のコンセプトに共感しましたし、ここに載ることで、ふだんの顧客層とは異なる人たちにぼくらのことを知ってもらえるかもしれないじゃないですか。それはチャンスだし、「ease」や会社のためにも、スタッフの子たちのためにもなる。最近はそういうことばかり考えていますね。

――先ほど、「お客さんを第一に考える」というお話がありましたが、それだけではなく、従業員の方たちのことも大切に考えていることが伝わってきました。

大山:お菓子作りについては叱りますし、厳しいことも言います。それでも楽しく働いてもらいたいんです。ちゃんと休みがあって労働時間は短くて、給料もそれなりにもらえる。そのうえで、「ease」で働けていることを誇りに思ってもらえるような環境を用意したい。それは結局、回り回ってお客さんの喜びにつながります。

――そんな大山さんにとって、「自分らしく働く」とはなんでしょうか?
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大山:「誰かのためにやること」でしょうか。お客さんのため、スタッフの子たちのため。それを基本にしています。だから、一緒に働いているスタッフの子たちにもそうあってほしい、と思います。

――最後に、今後の展望や目標も聞かせてもらえますか。

大山:直近の話でいうと、東京駅にオープンさせた姉妹店を盛り上げていくことです。「ease」とは異なり、購入しやすいフィナンシェなどの焼き菓子が中心なので、気軽に訪れてもらえるんじゃないかなと。東京駅のお土産の定番になって、ぼくらのお菓子が全国に広がっていくことを目指しています。

また、経営者としては、若手の子たちを支えていきたい。いまの子たちって、パティシエとしての独立願望を持たない子も珍しくないんです。そういう子たちが決して甘くはないパティシエ業界で働き続けるためには、やはり労働環境が良くなければいけない。だから、「ease」で働いていて良かったなと思ってもらえるように、彼らを幸せにしていくことも目標のひとつですね。

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画像: 日本橋・兜町、“再生の立役者”パティシエ・大山恵介さん。「早く一人前になるために、自分だけの道を探した」

大山恵介

1986年生まれ。高校卒業後、日本菓子専門学校にて和洋菓子を専攻。卒業後、京橋「イデミスギノ」、浦和「アカシエ」などのパティスリー・レストランで経験を積む。渡仏し、フランス各地のレストランでデザートと料理を学び、帰国後は、株式会社ひらまつ銀座「アルジェントASO」、代官山「リストランテASO」など数々のレストランでシェフパティシエを担当。東京・千駄ヶ谷の「シンシア」では、シェフパティシエとして「ミシュランガイド東京2019年版」で一つ星獲得に貢献する。2020年7月に、シェフを務める「イーズ(ease)」を東京・日本橋兜町にオープンし、その後も新宿・伊勢丹などに店舗を拡大させている。

執筆:イガラシ ダイ
写真:梶 礼哉

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