「どうすればいち早くステップアップできるのか」。自分の道を探した
大山:都内のお菓子屋さんやレストランでアルバイトをして貯めたお金を使って、渡仏しました。ただ、現地の人になにかを指導してもらったわけじゃないんです。フランスという国は、最初から「全部自分で考えてやってね」というスタンスの場所だったので。だから、どんなお菓子を作るか必死で考えて、日本のエッセンスを加えたものを出して喜んでもらったりしていましたね。
でも、結局それだと新しい学びはなかなか得られない。だから、たった1年間でしたけど、3軒のお店を渡り歩きました。最後の3か月間は市場に通い詰めて、さまざまなフルーツを買っては調理するのを繰り返していました。おかげでフルーツの良し悪しがわかりましたし、そこで審美眼が磨かれた気もします。
その後、帰国してからは知人のつながりでレストランを紹介してもらいました。パティスリーではなくて、レストランで働くことを意識していたんです。
大山:いずれは独立して自分の店を構えようと思っていたので、そのためにはある程度の知名度を得ておいたほうが有利じゃないですか。じゃあ、パティシエとしてどうやって有名になるのか。たとえばお菓子の大会で優勝するとか、有名ホテルのパティシエになるとか、いくつかルートはありますが、いずれも難易度が高い。パティシエって人口も多いですしね。
だけど、当時、レストランのシェフパティシエはあまり注目されていなかった。そもそも、レストランによってパティシエがいたり、いなかったりするような状況だし、新人の料理人がデザートを担当している店も少なくない。だとすれば、そこにパティシエが入り込めば、すぐにシェフパティシエを任せてもらえるわけです。それに気付いて、レストラン業界に的を絞りました。
大山:どうすればいち早くステップアップできるんだろう、とひたすら考えていただけなんですけどね。ぼくが最初にシェフパティシエになったのは23歳の頃。そこからずっとシェフパティシエとして試行錯誤してきました。