お客さまの身体や心の変化が、私にとっての「働く意味」になる
児玉:まずは、ジム時代からのお客さまのトレーニングメニューを考え直すことから始めました。お客さまの理想を叶えるために必要な、その方にマッチするメニューを組んでいったんです。
フリーになってからのお客さまで、1万人に1人という難病の方がいらっしゃいました。病院で検査をするたびに、免疫に関する数値が一つだけ改善しないというお悩みを持っていた。しかもその方は、「運動が苦手」なタイプで……。そんな方に、激しいトレーニングをご提案しても継続できませんから、まずは身体の軸や姿勢を整えるための小さなトレーニングメニューを考えて提案してみました。そしたら、だんだんと「運動することが楽しい」と感じていただけるようになって、1年ほど経った頃に、「最近は数値が安定していて、病院でびっくりされた!」という話をしてくださって。本当に嬉しかったですね。
児玉:そうかもしれません。気持ちの面をサポートすることはとても大切だと思います。例えば、女性の中にはダイエットに意識を向けすぎて、トレーニングをつらく考えたり、摂食障害を起こしてしまう方も少なくありません。でもトレーニングって本来、義務感に苛まれたり、過度な負荷をかけたり、その人に合わない方法を無理に続けるための手段ではないんです。
トレーニングという概念にこだわらず、まずは軽い運動やストレッチを続けてみることで「肩こりが治った」「姿勢がよくなった」とか、少しの変化を感じられたらそれでいい。まずはトレーニングに対するハードルを下げて、小さな積み重ねをすることが大切なんじゃないかなって。
そんな想いでお客さまと向き合っていたら、だんだん効果を実感してくださる方が増えてきて、少しずつ口コミが広がって……。私は今でも、ほとんど広告というものを使っていません。お客さまのつながりがつながりを呼び、フリーのパーソナルトレーナーとしての今があります。
児玉:本当にそうなんです。お客さまが、知人・友人の方を紹介してくださるということは、指導の内容に信頼を置いてくださっているからだと思うんです。だって、自分が信頼していない人を、自分の大切な人には紹介しませんよね?
一人でやってきたからこそ、「紹介してくださった」という喜びも大きいですし、「もっと期待に応えたい」という気持ちも出てきます。そして、自分で道を切り拓いていく楽しさもある。
お客さまの身体や心の変化が、私にとっての「働く意味」になっているんです。