役に立たないものをそのまま受け止める社会であってほしい

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――あらためてお聞きしますが、藤原さんにとって「自分らしく働く」とは何でしょうか?

藤原:自分らしく働く……。決して楽しいことだけではないと思います。むしろつらいことのほうが多いですし。でも、「働く」っていろんな切り口がありますし、「自分らしく」もその人によって違うので、答えが出ない問いかもしれませんね。トライアンドエラーを繰り返して、自分の感覚に従って見つけていくものじゃないでしょうか。

ただ私の場合は、それでも楽しかった。ここ10年くらい不安定な感じでやってきましたけど、突然賞をいただいたり、何かに選ばれたりして、すごく面白かったしワクワクさせてもらいましたね。

――「無駄づくり」が藤原さんの人生をワクワクさせてくれたんですね。では、「無駄」とは何だと思いますか?

藤原:たとえば、ある地点を目指すときに3時間で辿り着ける道のりと5時間かかる道のりがあったとして、大抵の人は3時間のほうを選ぶと思うんです。でも私は5時間の道を選んで、2時間分ダラダラと楽しみたいなと思ってしまう。その2時間に価値がある気がするんですよ。それはギャンブルみたいなもので結局は価値がないかもしれないんですけど、「あるかもしれない」に賭けたいし、何もなかったとしてもポジティブに変換して、「なんか良かったよね」と言える人間でありたい。

多くの人は何かを始めるときに、それが役に立つかどうかでふるいに掛けると思います。資格の勉強と虫の研究だったら、前者のほうが役に立ちそうなので虫の研究は落とされちゃう。でもそれってすごく勿体ないことだなって思うんです。虫の研究が何かの役に立つかはわからないけれど、でも好奇心のままに何かに没頭するのって人間に許された特権ですよね。私はみんなに、そう生きてほしいと思ってしまう。だからこそ、無駄だと思われがちなものを価値あるものにできるような未来を作りたいですし、それ自体がすごく面白いなと。

同時に、役に立たないことをそのまま受け止められる寛容な社会であってほしいとも思います。

――そういう社会が実現したら、一人ひとりがもっと生きやすくなるかもしれません。最後に、ひとりのクリエイターとしての展望があれば聞かせてください。

藤原:実は特にないんです。いまの生活が楽しいので、それが続くといいなと思っています。でも、「無駄づくり」をいつまで続けるのかはわからない。ずっとやっていこうと決めているわけじゃないですし、他に興味のあることが出てきたらそっちに行くかもしれないですね。

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画像: 「無駄づくり」発明家・藤原麻里菜さん 創作活動こそ自分を理解する手段

藤原麻里菜

1993年神奈川県横浜市生まれ。コンテンツクリエイター、文筆家。頭の中に浮かんだ不必要な物を何とか作り上げる「無駄づくり」を主な活動とし、YouTubeを中心にコンテンツを広げている。2013年からYouTubeチャンネル「無駄づくり」を開始。現在に至るまで200個以上の不必要なものを作る。青年版国民栄誉賞TOYP会頭特別賞受賞。YouTube NextUp 2016入賞者。2019年度総務省「異能(Inno)vation」最終選考通過者。2021年にはForbesの「世界を変える30歳未満の30人」にも選出。著書に『無駄なことを続けるために―ほどほどに暮らせる稼ぎ方―』『考える術──人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』など。

取材・執筆:イガラシダイ
編集:山口真央
写真:梶 礼哉

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