“めんどくさいお店”だからこそ伝えられる、野菜の物語

鈴木:せっかくなら、とことん“めんどくさいお店”であろうと思ったからです。そもそも駅からも遠くてアクセスしづらい場所だから、わざわざ来てくれるなら、いっそ不便を楽しんでもらいたくて。自分で重さを量って紙に書いて会計して、自分で紙に包むって、まさに面倒でしょ?
でも、面倒だからこそいいこともあります。自分で重さを量っているうちに「にんじん100g」「枝豆200g」の感覚がつかめるようになる。そうやって野菜にふれればふれるほど野菜との距離が縮まって、愛着がわいてきます。
かつ、ミコト屋ではスタッフがいつも店頭に立ち、お客さんに「野菜の前と後の物語」――つまり「この野菜はこんなふうに育ってきました」「家でこうやって食べるとおいしいですよ」といったことを伝えます。そうすると、さらにお客さんと野菜の関係が深まって、大事に食べようと思うようになる。

鈴木:お客さんといえどもフラットに向き合うことです。感謝とリスペクトは持っているけれど、挨拶は「いらっしゃいませ」ではなく、カジュアルに「こんにちは」だし、ランチのときには相席させてもらったりして、フェアな関係を築いています。
だって、僕らが変にへりくだったら、売っている野菜の価値が低いと言ってしまうようなものじゃないですか。農家さんが大事に育てた野菜は、お客さんが払ってくれるお金と同じ価値があるものだし、そこに自信を持っていますから。
もちろん、農家さんと僕らも同じようにフラットな関係です。野菜を仕入れる僕らのほうが偉い、なんてことはまったくありません。でも、言われるがままに野菜を買うわけでもなくて、きちんとその品質をチェックしているし、梱包などが悪ければ意見も伝える。その代わり、予期せぬ気候不順などで出来が悪くなっちゃった野菜の面倒も、できるだけ一緒に見たいと思っています。
