農家を買い支え、フードロスとも向き合うための実店舗

画像1: 農家を買い支え、フードロスとも向き合うための実店舗
――青果ミコト屋がまず始めたのは、ワゴンカーの移動販売。日本各地の農家をめぐって野菜や果物を買い付け、宅配や通販で消費者に届ける商売です。このアイディアはどう生まれたのでしょうか。

鈴木:僕が目指す八百屋をつくるためには、まず農家と仲良くなることがすごく大事でした。農家に直接行って畑を見て、そこでできた野菜を食べる。野菜やビジネスのことを話すというより、その人たちがどんなルーツでここに住んでいるのか。どんな趣味があって、パートナーとはどんな馴れ初めなのか……みたいなことをたくさん話します。

聞くだけでなく、自分たちのことを話して知ってもらうのも大事です。大切な野菜を託してもらえるくらい、人間同士の信頼が築けなきゃだめだから。そのためには、たくさんの生産者と消費者に直接会える移動販売が最適でした。

――そんななか、創業10周年を迎えた2021年に、実店舗「micotoya house」を構えたのは、なぜですか?
画像2: 農家を買い支え、フードロスとも向き合うための実店舗

鈴木:農家さんが危機に陥ったとき、ちゃんと“買い支え”ができる自分たちになるためには、実店舗が必要だったからです。移動販売では個人宅配と飲食店卸しかしていなくて、注文は事前受付のため、僕たちが買える野菜の量は決まっています。農家さんから「たくさん雨が降って茄子がとれまくっちゃったから、注文を増やせない?」と聞かれても、急にはどうしようもなくて。

たとえば、農家さんが別の自然食品店に送るはずだったカブが、間違えてうちに届いたことがありました。もともとの注文分もあったため、うちには多すぎる量。送り返したら鮮度が下がって売り物にならないけれど、売る当てのない僕らがそのまま買い取ることもできません。

結局、近隣にあるほかの卸先が引き取ってくれることになり、僕がそのカブを届けに行きました。すると、その卸先の店舗にも、じつはすでにたくさんのカブが並んでいたんです。

――「手元にカブがある」という状況は同じなのに、店舗を持つ卸先では余剰分のカブまで引き取ることができた、という。

鈴木:そう。その卸先は「いますぐ買い取ってあげなきゃ農家さんが損をしてしまうから」と、リスクを取ったわけです。みんなで食べる野菜なんだから、自然の都合で起きてしまう不具合のリスクは、みんなで負うべきですよね。そんなこと頭ではわかっていたし、周りにも「農家と二人三脚で」とか「生産者の想いを伝えていく」とか話してきたくせに、僕はいざというときに何もできなかった。これはショックでしたね。僕らも、店舗のように受け皿になるものを持ちたいと強く感じました。

――実際に「micotoya house」では、売れ残りそうな野菜や果物を使ったアイスクリームやまかないランチといった、在庫の「受け皿」になる取り組みが多々ありますね。

鈴木:お店の野菜って、山盛りのディスプレイじゃないと売れにくい。そうなるとどうしてもロスはつきものです。そのロスをできるだけいい状態で活かせるように考えたのが、青果を使ったクラフトアイスでした。大事な農家の野菜を余らせるわけにはいきませんからね。

画像: ▲その時々のロスした野菜・果物を使ったクラフトアイス。「枝豆」「カルダモンヨーグルト」といった変わり種も多く並ぶ

▲その時々のロスした野菜・果物を使ったクラフトアイス。「枝豆」「カルダモンヨーグルト」といった変わり種も多く並ぶ

鈴木:製造チームが頑張ってくれているのはもちろんだけど、アイスって包容力があるんですよ。一度は価値がないとみなされた野菜や果物でもしっかり受け止めて、おいしく変えて、新しい価値を生んでくれる。ただ、レストランのデザート並みに手間はかかっています(笑)

――店舗をつくったからこそできた、環境にやさしい取り組みですね。

鈴木:うーん、僕、「環境のためにやっている」というほどの志はなくて。自分たちが面白いと思うことをやるのが、僕らのビジネス。でも、それで環境に負荷をかけていたら心の底からいい仕事だとは思えないから、そこにも気を配っているだけ。だから、環境のためにやるべきだけどできてないことはいっぱいありますよ。車にも乗っちゃうしね。▲「micotoya house」で日常的に繰り広げられる、スタッフとお客さまとのフラットな会話。この日もお客さまとの会話に、たくさんの笑顔が実っていた

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