結果より過程を——「苦しい時ほど幸せ」だと思う

齊藤さんが仕事においても“本質”を追い求める理由。その根幹には、人生で経験した苦難と、そこから得た深い洞察がある。
プロ2年目、脳腫瘍を患って長らく闘病していた父が、亡くなった。喪失感に襲われる中、齊藤さんの家族の生活を守ったのは、父が遺した生命保険だった。自身が亡くなってもなお、残された家族に経済的な安心を届けることができる「生命保険の魔法の力」を身をもって知った。だからこそ、彼の言葉には力が宿る。
生命保険に救われた経験がある自分が、その価値を世に伝えなくてどうする――。
その強い使命感が彼を突き動かしている。
【My Rules③:結果ではなく、努力の「過程」にこそ価値を見出す】
「僕には、『あなたの人生に寄り添います』と約束した500人ものお客さまがいます。頼ってくれる人がそれだけいるということです。最近は、『齊藤さん辞めないでね』ってよく言われるんですよ(笑)。だから僕は、プルデンシャルを辞めるわけにはいかないんです」

取材の最後、齊藤さんは身支度を整えながら、こう言った。
「弱いところもちゃんと書いてほしいです。僕は決して強い人間ではありませんから」
手探りで、必死に自分の生き方を模索してきた。だからこそ周囲から、“順風満帆な人”と見られることに対する違和感があったのだろう。それは、彼の誠実さの表れに他ならない。
一度は会社を嫌いになり、迷い、苦しんだ。しかし、齊藤さんはその過程を自らを研磨する砥石とし、野球とは違うマウンドで、自分だけの戦い方、勝ち方を見つけ出している。そして積み重ねた努力の先には、今度こそ、ナゴヤドームのマウンドから見た観客席の光景に匹敵する、新しい景色が待っているはずだ。
(*)藤巻亮太作詞/「もっと遠くへ」(2008年/レミオロメン/SPEEDSTAR RECORDS/浮雲レーベル)より
執筆:千吉良美樹 撮影:梶 礼哉