日本で最初のハンバーガーチェーン、ドムドムハンバーガー。2025年1月現在、全国に29店舗を展開し、可愛らしいゾウのマスコットキャラクター「どむぞうくん」でも親しまれている。おいしい上に見た目もユニークなメニューが魅力で、これまで「手作り厚焼きたまごバーガー」「丸ごと!!カニバーガー」など数々の話題作を生み出してきた。その立役者が、今回のミモザなひと・藤﨑忍さんだ。
専業主婦生活を送っていた藤﨑さんは、夫の病により39歳で初就職に挑むことに。SHIBUYA109でのアパレル勤務から始まり、居酒屋経営を経て、株式会社ドムドムフードサービスへ入社。入社9か月で同社の社長に就任した。「異色の経歴で活躍を続ける経営者」「仕事に邁進するキャリアウーマン」……そんなイメージを持つかもしれない。しかし、藤﨑さんは言う。
「自己実現の場所は仕事だけじゃない。どんな場所でも、みんなすでに輝いているんです」――と。
このままでは家族を守れない。主婦、39歳、決意の初就職

藤﨑:4人きょうだいの3番目として生まれて、スポーツに打ち込む兄2人を追いかけるように私もスポーツに励んでいましたね。高校時代はハンドボール部。髪はベリーショートのツーブロックにしていました。学校は青山学院で、綺麗に髪を伸ばしているお嬢様みたいな女の子が多かったから、私みたいなのは異例中の異例よ(笑)。クラスでもニコニコしてる感じじゃなかったし、今の私とも、かなり印象が違うんじゃないかしら。
活発で見た目も少年のようにさっぱりしていたけど、家では女性として男性を立てることを意識してふるまうように教わりました。祖父と父が政治家で、政治家の妻としてよく働く母を幼い頃からみていましたし、20歳で短大を卒業した当時の私の夢はお嫁さんになること。私も母のように家族を支えることを夢見ていたんです。21歳の時に、父の事務所に出入りしていた彼と結婚。2年後に息子を授かり、夫の政治活動を支えながら39歳まで専業主婦をしていました。
藤﨑:まず、夫が選挙に落選したんです。同時に病気を患ってしまいました。夫は政治家の仕事に専念して他の事業を持っていませんでしたから、我が家の収入がピタッと途絶える事態になって……。私がなんとかするしかないと、人生初の就職を決めました。それがSHIBUYA109のアパレルショップです。

藤﨑:私がどこに就職したものかと困っていたら、友人が「親族がお店をやっているから働かないか」と声をかけてくださって。それで紹介されたのが当時全盛期の平成ギャルが集まる、109のアパレルショップの店長職だったんです。
周りはびっくり仰天してましたよ(笑)。「あの109!?」って。でもどう思われるかは気にならなかったし、気にしている場合でもなかった。夫が落選したのは7月でしたが、翌月の8月1日からもう働き始めていました。右も左もわからない状態からスタートして、スタッフのギャルたちと支え合いながら売上を伸ばしていったんです。だけど、就職から5年が経った頃、また無職になっちゃって……。
藤﨑:ここは経営方針、としか言いようがないですね。私ではなく、違う方に後継をお任せしたいというオーナーの意向があって。残念だったけど、辞めざるを得なくなってしまいました。新しい仕事を探すにあたって「何のスキルもないし、どうしよう」と悩みましたが、そういえば唯一得意なものがあったなと。それがお料理でした。
幼い頃から、お客さまにお料理をふるまう手伝いをしてきました。仕方なくやっていたわけではなくて、お料理が大好きだったの。だから、お料理が仕事でも私の力になってくれるんじゃないか。そう思って、飲食業の求人を探し始めました。