「ない」ところに未来はある。手を伸ばせばつながっていける

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――新卒時代からずっと勤めてきた場所を出るのは、怖くなかったですか?

堀:いや、何の恐れもなかったですよ。借金しかないところから始まりましたが、「これをやりたい」って旗を立てたら、「それ、いいですね」と言ってくれる人が少なからず集まってきてくれた。だから前向きでいられたし、あのとき人に支えられた経験があるから、今から挑戦しようとする人にも「大丈夫だよ」と自信を持って言えます。

「大失敗しても、全部なくなっても、大丈夫。何もないところならむしろ、これから何か見つけられるはずだ」って。

1 を 10 にまで大きくするとか、何か続いているものに後から参入していくのは大変で、才覚が必要なことだと思います。でも0 のところから1 を始めてみるって、意外とできるんじゃないかな。だって何もないんだから。やると決めただけで、オリジナルになる。

だから僕は、「0」のフィールドや、「ないもの」を探すことは、すごく一生懸命やりますよ。まだわからない、誰も気づいていないもの。「どこにあるんだ?」ってワクワクするじゃないですか。

――「ない」を探していけば、大丈夫。キャリアに悩む人にとって、光になりそうな言葉だと感じました。

堀:そう、大丈夫。でも、今まさに悩んでいる人に伝えたいことは、少し違ってきますね。

悩んでいるということは、たぶん過去についた傷が痛んでいるのかもしれない。そういう時は、まず元気な人と仲間になってみたらいいんじゃないかな。自分で何とかしなくても、きっとその元気な人が引き上げてくれるから。僕もそうでしたよ。周りの大切な人たちだけではなくて、SNSのフォロワーの皆さんも励ましてくれて、僕を助けてくれた。

――その人たちは、どうして堀さんを助けてくれたのでしょうか。

堀:僕が「困っている」とちゃんと言えたからじゃないかなと思っています。昔、とある方が教えてくれました。「助けを乞う力が必要なんじゃないか」って。

ただ「できない」じゃなくて、「やりたい、でもこれが足りない」と言える力です。はっきり言ってみると、気持ちがいいですよ。聞くほうも気持ちがいいと思う。きっと誰かが手を貸してくれる。近くにその誰かがいなくても、今はつながる先がたくさんあります。

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――堀さんは今、とても楽しそうに働いているように見えます。

堀:楽しいです。でも、途方に暮れそうにもなりますよ。正直なところ「何でこんな世の中悪い方向にばかり行ってしまうのかな」と日々諦めそうにもなります。だからこそ、身の回りの「捨てたもんじゃない」と思える出来事を心から大切に抱きしめたいと思っています。

今日もそんな出来事がありました。国会周辺で取材をしていたら、法改正に対するデモをしている人たちがいたんです。僕も同じテーマを発信しているから、皆さんが僕の顔を見て気づいてくださって。だから、「写真を撮っていいですか?」って言ったら、「ありがとうございます!」っていいポーズを取ってくれた。

変わりそうにない大きい世界を見ると途方に暮れてしまうけれど、近くには前を向いている人たちがいる。「よくこの局面で、そんな笑顔を」と、一番大変なはずの人の姿に励まされて涙することがよくあります。

メディアでは辛い状況に置かれた人たちの苦労や涙を描くことが多いけれど、そこには冗談もあるし、笑顔だってある。僕はそれを含めて伝えたいです。

――最後に、堀さんが叶えたい夢を教えてください。

堀:夢は、もう叶った気がします。多様な発信者が増えていって、自分たちで物事を決められるような世界にしたいと動いてきて10年。今、共感してくれる人たちも、同じ気持ちを持ってメディアで働く人たちもいます。だからもう大丈夫、僕が気張ってやる話じゃないだろうと感じてきた。これからはまた全然違うことをやるのもいいなと思っているくらいです。もう一度音楽をやろうかな、とかね(笑)

でも今後は、言葉ではないつながりが世の中には必要になってくる予感がしていて、それを模索してみたいとは思っています。今、研究者のみなさんと一緒に、離れたところにいる人と感覚を共有できる手段をいろいろなアプローチで考えていて。科学技術の力を借りて、言葉にされていない気持ちがそのまま共有されて、一緒に喜怒哀楽を体験できる未来がくるかもしれない。世の中はもっと悪くなっていくだろうから、そういう体験が求められていくんじゃないかな。

――もっと悪くなるだろうという予感と、もう大丈夫だという実感。それが同居しているのって、すごく面白いですね。

堀:権力が膨らんで暴走していく一方で、つながりを求めるあたたかな社会も育っていく。足元にあるつながりが希望になっていく。だからメディアは、つながりを作れるような在り方を探していかなければと思います。

問題の在りかを知らせて、議論させる、立ち向かわせるやり方は続いていかない。もっと包み込むような報道を探していきたい。きっと、見つかると思います。

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画像: 「自分のアクションで変えられる未来もある」。ジャーナリスト 堀潤さんが、枠を超えることで叶えた理想の報道

堀潤

1977 年 7 月 9 日生まれ。兵庫県出身。
立教大学文学部ドイツ文学科卒業後、2001 年 NHK 入局。アナウンサーとして「ニュースウォッチ 9」リポーター「Biz スポ」キャスター等、報道番組を担当。現在は、TOKYO MX「堀潤モーニングFLAG」のMCをはじめ報道番組や情報番組に出演、ジャーナリストとしても国内外の取材や執筆など多岐に渡り活動している。「Forbes Japan」オフィシャルコラムニスト。2019年から、早稲田大学グローバル科学知融合研究所招聘研究員に就任し、SDGsフロンティアラボで官民の枠を超えたイベントや情報発信を企画している。https://8bitnews.org/

執筆:紡もえ
撮影:梶 礼哉

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