かかりつけ医の存在が、我慢をしなくていい文化を作る

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ーレニックさんは、医師として日本の医療業界に対して改善すべき点や課題に感じている点はありますか?

レニック:大きな課題としては、かかりつけ医、総合診療医の存在ですね。オーストラリアや他の諸外国では、体調を崩したらすぐに相談できるかかりつけ医がいることが一般的です。ですが日本では、ここに特化している先生が非常に少ないんです。

かかりつけ医がいれば、風邪をひいた時でも、気分が落ち込んだ時でも、子どもの発達の心配がある時でも、生理痛がしんどい時でも、不安があればすぐに信頼できる医師に気軽に相談できます。かかりつけ医がそのまま診察、治療をすることもあるし、必要なら専門医を紹介してくれます。

それに対し日本では、風邪をひいたら内科、気分が落ち込んだら心療内科、生理痛がしんどい時は婦人科と、症状に合わせて自分で病院を探して相談する必要があります。日本の病院の専門性の高さは素晴らしいですが、このシステムだとまずは病院を探すことから始めなければいけません。すると受診するハードルが上がってしまうので、辛い症状を我慢してしまう人が増えてしまいます。

特にメンタルヘルスやセクシュアルヘルスはその傾向がありますね。自分が辛くても、周りから指摘されるまで我慢してしまい、結果的に治療が大変になってしまうという人を多く見てきました。

確かに私の財布の中にも診察券が何枚もありますし、毎回新しい病院を探すのは大変です …… 。かかりつけ医が決まっていればこの悩みもなくなりそうですね!

レニック:オーストラリアであれば、月経困難症や不安症があっても、ついでに相談するんですよ。

咳が辛い、と診察に来た患者さんが、一通りの診察が終わった後、帰りがけに「ちなみにね〜」って相談してくれます。それだけのために受診をしようとは思わない症状であっても、総合診療医があれば気軽に、ついでに相談できるんです。

なので、日本でも私のようなかかりつけ医の存在が当たり前になったらいいなと思います。そんな体制を作ることが、今後の日本の医療業界が取り組むべき課題の一つだと思います。どんな症状でも、とりあえず気軽に相談できる医者がいれば、我慢して辛い思いをする人が減らせるんじゃないかなと。

ー「かかりつけ医」の存在は、近年メディアにも取り上げられるようになりましたが、まだまだ浸透には時間がかかりそうですよね。最後になりますが、医師であり、父親であるレニックさんの今後の目標をお伺いさせてください。

レニック:ワークライフバランスの部分が自分にとっての課題だと思っています。もっと家族と過ごす時間を増やしたいなと。

子どもは毎日新しいことを学び、成長しています。大人になると新しい経験が少なくなっていくんですが、子どもは初めてセミを見つけたとか、そういった初めての経験が日常生活に溢れています。それを親として一緒に経験できることはとても幸せです。

ですが、子どもが小さいのは本当に一瞬ですから。その時間を大切にすることが、父親としての一番の目標ですね。仕事が忙しくても、ある程度はプライベートの時間を確保することが必要だと思います。

せっかくこれだけ充実した夢の国に住んでるのですから、47都道府県全部を旅したり、家族の時間をもっと大切にしたりして、思い出を一緒に作っていきたいですね。

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画像: 「育児が評価される社会」を変えられたなら。 総合診療医レニック・ニコラスさんが望む、育児と社会の温かい関係

レニック・ニコラス・ジェイムス

オーストラリア出身の総合診療医(General Practitioner)。2020年に日本の医師国家試験に合格し、NTT東日本関東病院で初期研修をしました。現在はバイリンガル医師としてTokyoMedical and Surgical Clinic(東京都港区)で診療しながら、東京医療保健大学、東京医科歯科大学、東邦大学で指導。テレビやSNSでの「日本と海外の医療」についての発信も積極的に行う。

取材・執筆:宮﨑 駿
編集:山口 真央
写真:梶 礼哉

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