自分探しは、しなくていい

飯島:うーん……実はいつも答えに迷う質問です(笑)。その時その時、目の前の作品のためにできることをやってきた結果、私らしいあり方や個性としてみてもらえるものが生まれていった感覚で。
個性って結局、自分が経験したことや、身についたものから自然と生まれてくるものじゃないかな。私、自分探しはしなくていいと思うんです。
飯島:いろんな人の活躍が目に入って「個性がないといけない」「特別なものを持たなければ」というプレッシャーを感じやすい時代ですよね。たしかに、自分自身をはっきりと答えられる人は素敵だし、輝いて見えます。けれど答えられない人の方が大多数だと思う。あいまいだし、難しいじゃないですか、自分を探すのって。
私も「私といえばこれ!」というものを探してみた時期がありました。技術が素晴らしい人も、フィジカルが強い人もごまんといる中で、自分が際立って輝くために個性という武器が欲しかったから。でも考えれば考えるほど「自分には何もない」と悩むことになり……。
そんな日々を抜けるきっかけになったのは、芝居が必要な役を演じたときに、表現力を褒めてもらったことでした。だったらこれを強みとして磨いてみようと思ったんです。表現を探求していくのは楽しいですし、今も褒めていただくことがよくあります。
だから、人から見えている「あなたらしさ」や評価されているものに目を向けてみるといいと思います。自分の想像と全然違って否定したくなるときもあるかもしれないけど、一旦ぐっと飲みこんで消化してみたら、しっくりくる個性に出会えるかもしれませんよ。

▲ファッションモデルとしても活躍する飯島さん(ご本人提供)
飯島:きっかけは、趣味でコーディネート写真を投稿していたInstagramに、雑誌の特集のご依頼がきたことです。当時1940~50年代の外国映画に出てくるファッションが好きで、オードリー・ヘップバーンが着ていたようなAラインのスカートやワンピースをよく載せていました。それをみた雑誌の編集者の方が連絡をくださって。
私としてはそんな話がくるなんて想像していなかったので、「いい記念になるな」という気持ちでした。でもそこからお仕事の話が続き、「もしかして私、求めてもらっているのかも」って。
舞台がない期間は髪型を大胆に変えることが多いので、印象の変化も面白がってもらえたみたいです。ベリーショートや金髪にするバレエダンサーって珍しいから。
飯島:そうです。いい反応ばかりではなかったんですけどね。バレエ以外の仕事をすることを好ましく思わない人もいるし、髪の色を変えることや、さまざまなファッションでメディアに出ることに対して肯定的でない意見もいただきます。
飯島:最初はただ悲しかったです。私はバレエが好きでバレエを軸に生きているのに、集中していないと思われたのかな、とか。今は、否定的な印象を受ける人がいるということも、ちゃんと意識しないといけないなと襟を正しているところです。
ファッションの分野で私を知って劇場に来てくれるお客さんもいるので、間違っているとは思っていないし、自分のすべてを変えようとは思いません。でも自分がいる場所のカラーに合わせていくことは必要だなと思って。
おやすみ期間のファッションとはいえ、私のみられ方が同じバレエ団の仲間に良くない影響を与えるのは嫌ですから。