なりたい自分を確かめるため、「振り出しに戻ってみた」

飯島:10代から20代前半はずっと気を張っていましたから。今思うと、だいぶ性格も尖っていたと思います。
寝ても覚めてもバレエのことばかり考えて、人と比較してしまって……悩み続けた時期でもありました。今は自分に合ったバレエとの向き合い方を見つけて落ち着いた気がします。
飯島:ありましたね。ヒューストンバレエでソリスト※になった後、自分がなりたいバレエダンサー像を見失ってしまって……。一度ゼロから自分を見つめなおしたくて、バレエ団を退団しました。
※重要な役を与えられ、ソロを踊ることができるダンサー

飯島:当時はすごく高く評価してもらっていて、力まなくても役をいただける恵まれた環境にいました。ありがたいことですよね。でも私は、その環境に甘んじている自分がいやだった。「このままでは怠け者になってしまう」という焦りもありました。だから、自分はここにいるべきではない。振り出しに戻って、自分が何をしたいのか確かめようと思ったんです。
※特定の形式やルールにとらわれず、自由な表現を追求する現代的なダンススタイル
飯島:「コンテンポラリー向きじゃない」「クラシックのバレリーナすぎる」と、こてんぱんにされましたね。役もないのにリハーサルに行くなど、猛アピールしたんですが、思うように舞台にも立てませんでした。悲しいし悔しかったけど、自分が得意とする踊りを再確認できたので、挑戦してよかったと今は思います。
その後、ありがたいことにヒューストンバレエが戻っておいでと言ってくれて。自分を必要としてくれる場所があり、自分の得意を発揮できる場所があるって幸せなことですよね。「とにかく踊りたい!」という気持ちも最大に膨らんでいましたし、恩を返したいと頑張った結果、プリンシパルにまでならせてもらうことができました。
結局バレエが好きで、踊るのが好き。だからここまで続けてこられたと思います。舞台に立って踊っていると、つらい、やめてしまいたい、と思う瞬間もあります。でも終わってしまえば、「楽しかった」という気持ちでいっぱいになるからやめられない。それに「次はこうしたい」という課題や反省点や欲がとめどなく湧いてきます。それがあるから向上し続けられるし、自分に課すものがある限り頑張り続けられるのかなと思います。