海外の環境に適応するために心がけていること

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――そういった想いの積み重ねからプロのサッカー選手になって、現在はイングランドのマンチェスター・シティWFCに所属されています。海外に出てみて、日本との違いを実感することはありますか?

唯:海外の選手は自分の意見を曲げないです(笑)。意見の違う人同士がバチバチやり合うことも珍しくない。それと、監督と選手がフラットな関係です。日本だと、選手が監督になにか意見するのってなかなか難しいと思うんですが、海外だと立場の違いなんて関係なくて、監督に対してもみんなガンガン意見を言いますね。

――そんな環境下で、唯さんも感化されることはありましたか?

唯:私自身は元々自分の意見を言うタイプなんです。ただ、だからこそ、海外だと言い合いになってしまう。なので、いまは敢えてなにも言わず、私は私が良いと思ったプレーをすることに徹していますね。逆に日本だと、選手同士が歩み寄る文化が根付いているので、そういうときは自分の意見を正直に打ち明けて話し合うようにしていました。

――海外でプロのアスリートとして生活することに、苦労もあるのではないですか?

唯:筋トレがキツいとか、自炊が面倒とか、日本食が恋しいとか、そんなことくらいです(笑)。言語の問題とかもありますが、私はあまりストレスを感じない方なのかな。たまにモヤっとすることがあっても、仲良しの友達に吐き出せばスッキリしますし。自分の中にストレスを溜め込まずに、言葉に出してしまうことで自然と消化できているのかもしれませんね。

――海外生活中、家族から応援メッセージは届くんですか?

唯:女子選手は家族とマメに連絡を取る人も多いですが、私はそんなにこまめに連絡を取る方ではなくて。たまに母から、バーってたくさんメッセージが届きますけど、ちゃんと読み切れなくて、軽く返信して終わったり(笑)

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伸:うちの家族は唯のことを黙って見守っている感じなんです。ただ、こちらは唯から影響を受けていますよ。僕はもうサッカーを離れて仕事をしていますけど、「唯に負けないように頑張ろう」っていつも思っていますし。僕のお客さまからも、「唯ちゃん、頑張ってるね!」と言われると、やっぱり嬉しいですから。

――そうやって海外で闘っている唯さんは、2020東京大会にも出場されましたね。

唯:私にとって初めてのオリンピックが東京開催でした。でも、コロナの影響でほぼ無観客で……。それが本当に悔しかった。せっかく東京でやるんだから、女子サッカーの面白さも見てもらいたかったのに。

とはいえ、何かを背負っているという感覚ではなくて。私は私のためにサッカーをやってきて、それはずっと変わらないので、オリンピックでもワールドカップでも気持ちは同じで、「とにかく楽しんで試合に臨もう!」と思っていましたね。

伸:唯は、大事な試合の前でもあんまり緊張したりしないらしいんですよ。オリンピックとかワールドカップとかでも、ワクワクする気持ちの方が強いみたいで。妹ながら、スゲーって思います(笑)

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楽しい人生にしたいなら、「夢中になれること」にトライしてみて

画像1: 楽しい人生にしたいなら、「夢中になれること」にトライしてみて
――ここまでお話をうかがってきて、サッカーがとにかく好きで楽しくて仕方ないという気持ちが伝わってきました。そんな唯さんから読者の方へ、「好きなこと」で生きていくためのアドバイスはありますか?

唯:う~ん……。ふざけているように聞こえるかもしれませんが、「好きなら、やったら良いじゃん!」って思うんですよ。これは私の性格によるものが大きいのかもしれないですが、私自身、「これをやりたい!」と強く思ったときって、不安や心配といったネガティブな気持ちは湧いてこなくて。むしろ、ポジティブな未来ばかり浮かんできちゃうんです。だから、「やったら良いよ!」としか言えなくて……。

伸:実は、僕がプルデンシャルに転職してチャレンジしようと思ったとき、両親からは大反対されたんです。フルコミッション(完全成果報酬)の営業の仕事ですから、不安定じゃないか、って。

でも、唯だけは「大丈夫っしょ!」って言ってくれた。その言葉に背中を押してもらって今の僕があります。

唯:やっぱり、やりたいならやってみたほうが絶対に良いと思うんです。私もサッカーが好きで、ただやりたかったから続けてきて、こうしてプロ選手になったわけですし。

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――やりたいなら、やる。好きなことに対し、そんな風に突き進むのって意外と難しい気もします。

唯:もしも突き進むことに躊躇してしまうのだとしたら、心から楽しめていないのかもしれません。好きな道を進むときに大事なのって、それが本当に楽しくて夢中になれるかどうかだと思います。

それに、やっていて楽しいから好きになるんだし。今日の私、「好き」と「楽しい」しか言ってませんね(笑)。でもそれくらい、楽しいという気持ちを大事にしてもらいたいと思っています。

それともうひとつ、「自信があるかどうか」もポイントかもしれません。自信があれば躊躇したり迷ったりもしないはず。もしも自信がなかったら、自信がつくまで頑張れば良いだけです。私も、自信が持てるまでひたすら練習をしましたし、努力したことでもっとサッカーが好きになれましたから。

――唯さんに憧れる少年少女にとって、勇気が湧くメッセージですね。では最後に、今後の目標や夢があればお聞かせください。

唯:「人生を楽しく過ごす」。これに尽きますね。もちろん、サッカーでの目標もあるんですけど、引退してサッカーから離れたとしても、夢中になれることを見つけて楽しく生きていきたいと思っています。いつかは結婚だってしたい。いまはサッカー以外に楽しいことが見つからなくて、困ってるんですけどね(笑)

とにかく、好きな人たちに囲まれて、楽しい人生を送っていきたいと思っています。それが私の一番の目標です。

伸:兄の立場から言わせてもらうと、直近で2024パリ大会があるので、そこでも活躍してもらいたい。(※取材は6月に行いました)今回は現地まで応援に行くつもりです。そして、いつまで続けられるかわからないけれど、サッカー界で長く活躍してもらいたいですね。これが家族の願いです。

唯:ありがとう!お兄ちゃんも最近結婚したんだし、ちゃんと幸せになってよね。それと、今度ゴルフで勝負しよう!

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画像2: 「私にはサッカーがあった。夢中になれたから、走り続けてこられた」。女子サッカー日本代表、英マンチェスター・シティWFC所属 長谷川唯さん

長谷川唯

1997年生まれ。埼玉県戸田市出身。幼少期からサッカーに親しみ、中学生で日テレ・ベレーザの下部組織であるメニーナに入団する。2021年1月にACミラン、8月にウェストハムに移籍。2022年9月、マンチェスター・シティに移籍した。2017年から日本代表に選ばれ、2019年W杯や2020東京オリンピックにも出場している。英紙『ガーディアン』が選ぶ世界の女子選手トップ100にもランクイン。

執筆:イガラシダイ
撮影:梶 礼哉

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