「ビリヤニ原理主義」を通じて、多くの人を幸せに

画像: (ご本人提供)

(ご本人提供)

――愛するものを仕事にしたことで、ビリヤニが嫌になってしまうことはありませんか?

大澤:ありませんね。いまも味をブラッシュアップするために、週10食以上は自分で作ったビリヤニを食べているほどです。でも、ビリヤニハウス時代に比べれば、いまは若干距離があると思いますよ。

毎月一週間はお店を休んで、国内外に味のインプットをしに行ったりしているし、それがまたいい刺激になっています。距離を置いたからこそ、また愛しいというか(笑)

――ビリヤニと出会って14年。今後挑戦したいことはありますか?

大澤:万人が感動するビリヤニをつくりたいです。「日本人向けの味」「現地の味」とかじゃなくて純粋においしさを高めれば、いつどこで誰が食べたっておいしいはずだし、ビリヤニは一度に多くの人を幸せにできるから。

そのためにもチャレンジしたいのはインド出店ですね。現地に拠点をつくれば食材を輸入しないで済むから、産地や生産者、旬にもこだわって、もっと味を高められると考えています。

神田の店は僕のラボでもあり、毎日腕が上がっている実感もあるけれど、ここで立ち止まってはいられません。いまある固定観念を取り除いて、食材や作り方を適宜見直しながら、さらなる高みを目指していきたい。だって、ビリヤニってビギナーでもたまにめちゃくちゃおいしいのができるんですよ。うちは研究の末にクオリティを高止まりさせているけれど、有名店でも味にブレが出ちゃうような料理なんです。その不安定さや、宇宙級のホームランが狙える振り幅の大きさこそがビリヤニの魅力。可能性は無限大です。

商売としてのビリヤニではなくて、これからもビリヤニの味だけを追求する「ビリヤニ原理主義」を貫いていきたいですね。

――大澤さんは南インドで天職を見つけられたんですね。終始、ビリヤニに対する熱い使命感が伝わってくるインタビューでした。

大澤:仕事って、どれだけ人を喜ばせられるかだと思うんです。僕が歌をうたっても喜ぶ人はあんまりいないけど、ビリヤニをひと鍋炊くだけで何十人もの人に喜んでもらえます。だから、僕はビリヤニと向き合い続けるんです。

ただ、僕が追求しているのはビリヤニのおいしさだから、自分よりも才能あふれるビリヤニ職人がいるんなら、その人がつくってくれたって全然かまいません。でも、熱量は誰にも負けないと思います。少なくとも世界じゅうで僕が一番、ビリヤニが好きだから。

画像: 「ビリヤニ原理主義」を通じて、多くの人を幸せに
画像: すごいのは僕じゃなくてビリヤニ。予約困難店・ビリヤニ大澤店主・
大澤孝将さんが徹する「ビリヤニ原理主義」

大澤 孝将

1989年長野県生まれ
2009年、南インドを訪れビリヤニに出会う。以降ビリヤニの魅力に取りつかれ、現地で調理法を学び間借りのビリヤニ専門店を始めると同時に、経堂のモダンインド料理の名店「ガラムマサラ」で働き始める。2021年神田にビリヤニ専門店「ビリヤニ大澤」をオープン。ビリヤニの最高値を提供するためメニューはビリヤニ1種類のみ、カウンター10席一斉スタートの完全予約制というスタイルながら、オープン以来一度たりとも空席がない予約困難店となっている。

取材・執筆:菅原 さくら
編集:山口 真央
写真:梶 礼哉

This article is a sponsored article by
''.