ベッドから動けないほどしんどい人にも、SNSを通じて言葉を届けたい

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―― 大学院で資格を取得して、臨床心理士・公認心理師になったみたらしさん。実際に働いてみて、いかがでしたか?

みたらし:心理職として働く上では、いかに「自分と向き合えているのかどうか」が大切なのだと痛感させられました。

たとえば、過去に辛い経験をしていたからといって、同じ経験をした人の気持ちがわかるとは限りません。私自身も自傷行為をしていた過去はありますが、同じく自傷行為をしている人の気持ちがわかるかといえば、それはその人のお話を伺わないとわからない部分もあります。また例えば、いじめに関するトラウマを抱えている心理士のところに、いじめの加害者が相談者としてやって来る場合もある。そうすると、心理士自身が過去のつらい出来事を思い出してしまって、カウンセリングができなくなる可能性があります。

心理士とはいえ、一人の人間ですから。だからこそ、自分の過去とも向き合って、ある程度着地点を見つけた上で、相談者さんに接することが求められます。

―― 自分が抱えている傷と、目の前にいる相談者さんとは切り離して考えること。当たり前のようですが、すごく難しいのかもと思います。

みたらし:大学院生の頃、教授に「臨床心理士になるなら、まずはあなた自身が心も体も健康でいなくちゃいけない。これは臨床心理士の職責だよ」と何度も言われてきました。

実際に働いてみて、その意味を実感しましたね。だから、私は今も最初にお話をした「教育分析」を受け続けています。定期的に師匠みたいな存在の方のところへ足を運んで話を聞いてもらうんです。自分と向き合い続けていくうえでも、大切なことだと実感しています。

―― 現在はどういった働き方をしていらっしゃるのでしょうか?

みたらし:いまは『国際心理支援協会』というカウンセリングオフィスに所属していて、臨床心理士として勤務しています。個人だけではなく、夫婦やカップル、家族などのグループカウンセリングもあり、日々さまざまな方とお会いして話を聞いています。その合間にこうして取材を受けたり、コメンテーターとしてメディアに出演させていただいたりもしています。

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―― みたらしさんの活動で印象的なのは、いま困っている人、悩んでいる人に向けた「発信」です。柔らかい言葉を使って、メッセージを届けようとされていますよね。

みたらし:ありがとうございます。実は、臨床心理士として総合病院の精神科に勤務していた頃、患者さんの多くが、病状がかなり悪化してからやっと病院に来る、急性期の方たちばかりでした。

自分の周りにも、私から見たら「もう病院に行った方がいいフェーズだな」と感じるような症状が出ている人が、「自分は大丈夫」と通院を拒否するケースも多くて……。だから、精神疾患というものが何なのか多くの人に知ってもらう意味でも発信をしています。

それともう一つ。人が精神科や心療内科、カウンセリングルームまで足を運べるのって、少しだけ力が湧いたときが多いんですよね。本当にしんどいときはベッドから動けない。そういうときでも、SNSだったら見られる人も多いんですよね。だからSNSで発信することで、本当にしんどくて動けない方たちの息抜きになれたらいいな、とも考えています。

―― みたらしさんのSNSを見て、カウンセリングを受けるハードルが下がった、という方も多くいるのではないでしょうか。

みたらし:ありがたいことに、実際そういった声もいただきます。

「今日、病院に行ってきました」とか、「実はいま、入院しています」とか。あるいは、同業者の方から「みたらしさんの投稿を見て、患者さんが病院に来てくれました」なんてメッセージをいただくこともありました。

そういう声を聞くと、自分が発信をはじめた意義があったかな、と嬉しくなります。とはいえ、日本ではまだ「精神科、心療内科に通っている」とはなかなか言いづらい。本当は、「内科に行ってきたよ」くらいの感覚で捉えてもらえるといいんですけどね。


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