「夢を叶える」のは決して容易なことではない。どんな人にも平等にチャンスが訪れるわけではなく、さまざまな事情から夢への道のりを途中でドロップアウトしてしまう人は少なくないだろう。それでも、「自分が抱えている事情を言い訳にしたくない」と強い意志を持ち、夢を叶えた人がいる。俳優・ネイリストとして活躍する津田絵理奈さんだ。

彼女は生まれつきの難聴であり、手話を使って生きている。それを理由に「俳優になんてなれない」と夢を否定されたこともあった。しかし、地道な努力は実を結び、『みんなの手話』への出演やテレビコマーシャル出演、そして今年は社会派映画として話題になった『波紋』にも出演し、さらなる注目を集めているのだ。

「『なりたい自分』を諦めることは絶対にしたくなかった」。そう語る津田さんを通じて、夢との向き合い方について考えてみよう。


「耳が聞こえないのに俳優なんて無理」と言われても

画像: 「耳が聞こえないのに俳優なんて無理」と言われても
――最近、ドラマや映画でろう者・難聴者の役を当事者が演じることも増え、日本でも、ろう者・難聴者の俳優が少しずつ認知されてきているように感じます。

津田:そうですね。私が俳優を志した10代の頃は、まだまだ「耳の聞こえない俳優」は少なくて。そのなかでも、私が俳優を目指すきっかけになったのは忍足亜希子(おしだり あきこ)さんでした。同じ聞こえない方が同じ夢を持ち、それを叶えているということにとても衝撃を受けたことを覚えています。お陰様で私も彼女のようになりたい、聞こえなくても諦めなかったら夢が叶えられるんだって闘志が湧きました(笑)

それから何年か経ってから実際お会いできたのですが、とても綺麗で楽しい方でした。今でもずっと憧れの女性です。

――津田さんご自身はどのような難聴なんですか?

津田:高い音や声はわずかに聞こえますが、低い音、声は聞こえません。そして高い音、声が聞こえるとしても、それが音なのか声なのか区別するのは難しいです。「自分は耳が聞こえないんだ」と自覚したのは幼稚園児の頃。当時から声のみでの会話が理解できませんでした。口をパクパク動かしながらの会話に憧れを持っていた記憶さえあります。でも、大人になったら、自分もみんなのように会話できるようになるんだ、と思っていました。

――小学生の頃、ろう学校に通いながらも、月に一度は通常学級にも参加されていたんですよね。

津田:はい。ただ、高学年になるにつれて、耳が聞こえるクラスメイトや先生のお話も理解できなくなり距離ができてしまいました。中学生になった頃には、通学電車のなかでろう者の友人と手話で話すことが恥ずかしくなってしまって……。手話を使っていると、周りからジロジロ見られてしまうんです。それもあって、補聴器も目立たない肌色やクリアカラーのものを選ぶようにしていました。思春期を迎え、難聴であることによって自分自身がじわじわと追い詰められていったんです。

――苦しいこともあった10代だったんですね。そんな中で、「俳優になる」という夢を見つけたそうですが、何かきっかけがあったのでしょうか?

津田:2004年に放送されたテレビドラマ『オレンジデイズ』を観ていて、自分もやってみたいなって思ったんです。元々、私は幼い頃から活発で怖いもの知らず。家族と出かけているときも一人でどこかへ行ってしまって、大慌てでみんなが探し回るということがしょっちゅうで(笑)。そんな性格だったので、俳優を目指すと決めたときも、自分は何も怖くなかった。ただ、親からは反対されていました。
※病気によって耳が聞こえなくなった女性が登場するドラマ

――ご両親は津田さんが難聴であるからと心配されたのでしょうか?

津田:「耳が聞こえないのに俳優なんて無理。どうやって喋るの?演技するの?」と言われていました。でも、耳を理由に「なりたい自分」を諦めることは絶対にしたくなかった。それはいまも昔も変わりません。

――当時から真っ直ぐな思いを持たれていたんですね。デビューまでの経緯を教えてください。

津田:15歳のとき、親に隠れて、いまの事務所のホームページから応募しました。すると「一度会いたい」と返事があって。当時は奈良に住んでいたんですが、事務所の社長がわざわざ奈良まで会いに来てくださったんです。両親同伴で話を聞くことになりました。

――ご自宅まで!とはいえ親御さんの反応が気になりますが……。

津田:それが、あんなに反対していたのに、いざとなったらすごく喜んでくれたんです(笑)。事前に可愛い服も買ってくれて、当日は一緒に話を聞いてくれました。高校を出てからもっと夢を追いたくて上京したいことを話した時も、「頑張れるだけ頑張ったら?いつでも帰ってきたらいいよ」って、応援してくれた。今でも私を守ってくれて、味方でいてくれています。両親がいるからこそ頑張れたのもありますね。


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