「結婚式を挙げるなら、式場よりも先に“彼女”を押さえろ」と言われる人物がいる。ブライダルヘアメイクアーティストの服部由紀子さんだ。式場内や提携先の美容室でのヘアメイクが一般的なウェディングの現場。そこに「指名制」という新しいスタイルを確立させた。彼女の確かな手腕と信念に、Instagramでは13万人を超える人が熱い眼差しを向ける。

名古屋の小さなマンションの一室からサロンをスタートし、今や国内のみならず海外まで飛び回る服部さん。多忙を極める中、取材に応じる彼女は意外なほど “等身大のひと“ だった。「仕事にはとことんこだわりたい。でも人間だから、落ち込むこともたくさんあります。どちらの自分も好きです」。カリスマと呼ばれても、弱さを隠さず決して自分を飾ろうとはしない。

「どんな経験も、全てが今に繋がっている」と語る服部さんから、時に迷いながら働くすべての人へ。熱くてまっすぐなエールを贈る。


仕事の傷は、仕事で癒す。積み重ねが連れてきた「結果」と「自信」

画像: 仕事の傷は、仕事で癒す。積み重ねが連れてきた「結果」と「自信」
ーー服部さんは、ご自身のお仕事について心から楽しそうに語られますよね。今まで「仕事を辞めたい」と思ったことはないのでしょうか?

服部:23歳の時に一度大きな失敗があって、当時は仕事を続けるべきか悩みました。

一番笑顔でいてほしい存在である“花嫁さん”を、「一生に一度の日だったのに…」と泣かせてしまった。でも仕事を続けることで立ち直れたんです。よく、恋に傷ついた人は、新しい恋でしか癒されないなんていうじゃないですか? それと似ていて、仕事で失敗して傷ついたら、仕事での喜びを積み重ねて立ち直るしかない。だから、失敗しても簡単に現場から離れることはできなかったですね。

ーー失敗したからこそ、簡単には離れられなかった…。本当にかっこいいです。服部さんにとって、忘れられない式はあるのでしょうか?

服部:どの式も大切でかけがえのないものですが……。その中でもおひとり、私の原点というか、ずっと忘れられないであろう花嫁さんがいます。その方は生まれつき髪が生えない方でした。私にとっても初めての挑戦でしたから、どうやって最高の一日にするか時間をかけて一緒に考えたんです。ウィッグをアレンジするだけではなくて、オリジナルのアクセサリーを作ってみようとか、ターバンみたいなヘアアレンジをしたらどうかとか。

当日、花嫁さんにいただいた言葉は、「こんなに自分が変われると思わなかった。本当にありがとう」でした。お母さまも感動で涙を流していらっしゃった。この経験はとても大きな自信に繋がりましたね。

ーーそうやって挑戦して、自信を積み重ねて、今の服部さんがあるのですね。

服部:どの仕事に就いていたとしても、きっと私は同じです。失敗をした時は本当に落ち込みますが、その失敗は一つひとつ成功を積み重ねて、自信を取り戻していくしかないのだと思います。逃げずにそこに向き合えるかどうか、です。

「自信ってどうやってつけたらいいですか?」と聞かれることも多いですが、いきなり身につけられるものではありません。結局は結果の積み重ねでしかない。

――身に染みる言葉です……。

服部:泥臭いと思われちゃうかもしれませんね。夢や目標を持つことはが大事だと思いつつ、それがプレッシャーになってしまうこともあると思います。達成ができなかったら自信を失ってしまうかもしれない。

だから目の前の仕事を、コツコツ真面目に達成していく意識でいます。「小さなことを積み重ねていたら、気づいたら大きな結果がついてきていた」っていう人って、すごくかっこいいじゃないですか。


弱さをさらけ出してもいい。誠実で、愛される人でいたい。

画像1: 弱さをさらけ出してもいい。誠実で、愛される人でいたい。
ーー「小さなことを積み重ねる」。簡単なことのように聞こえますが、継続するのはとても大変ですよね。服部さんの強さを感じます。

服部:いえいえ、根っこは弱い人間なんです。弱いし、とてもさみしがり屋。でも、それを恥ずかしいとは思っていないし、オープンにするからみんなが助けてくれる。だから逆に助けを求めている仲間がいたら、必ず手を差し出します。

そんな私だからこそ、助け合いで成り立つウェディングという仕事が大好きなんです。みんなが助けてくれることを知っているからこそ、「まずは自分から」っていうのは意識していますね。仕事でも仕事以外でも、どんなに眠くても、忙しくても。

私が何事も本気でやるからそれが伝わって、みんなが助けてくれているのかなって。

ーー自分が本気なら相手にも伝わる。それはいつから実感していましたか?

服部:幼少期からかなぁ……母親の教えのおかげだと思います。ずっと「どうせやるんだったらちゃんとやりなさい」って言われて育ちました。母は、私が求められた以上のことをやったらすごく喜んでくれた。そしてその母の姿が、次もまた頑張ろうっていう力になっていました。お小遣いもテストの点による変動制でした(笑)

そんな私が大人になって、仕事でも相手に「本気」を伝えていたら、それがちゃんと伝わっていた。花嫁さんにも、「担当になった以上、最高の一日にしてみせるから、信じて」って言い切っています。本気を伝えるから信用してくれるんです。

万が一、達成できないことがあったとしても、そこまで言い切って取り組んだ姿勢は伝わると思うんです。きっと誰も怒らない。まずはその気持ちと姿勢が大事なのかなと思います。

だから、サロンのスタッフにはいつも伝えています。「失敗してもいいよ。でも、そこに“本気”と“愛情”がないと絶対だめだよ!そして感謝を忘れずにね。」って。

ーーそんな服部さんにとって、「自分らしい生き方」とはどんなことでしょうか。
画像: ▲ご本人提供

▲ご本人提供

服部:「誠実でいること」かもしれないですね。妥協せずに本気で仕事をすることも、時間を宣言して動くことも、相手と向きあって時にはぶつかることも、すべて「誠実」。

仕事だけじゃなく、自分の気持ちに対しても常に誠実であることが、「自分らしい生き方」につながると思います。人生の中で、選択の瞬間ってたくさんありますよね。

例えば、やりたいことがあるのに一歩踏み出すことに悩んでいる人を見ると「やってみたらいいじゃん!」って伝えます。自分の世界を広げるチャンスはもう来ないかもしれないから、その時の自分の想いに蓋をしないで欲しいなって思うんです。もちろん、軽い気持ちで後押しはしません。その人が自分なりにきちんとやりたいことへの筋道を立てて、その結果に対して責任が取れると思えるほどの想いがあるかどうか。YESなら、私はいくらでも後押ししたい。

ーー相手にも自分にもとことん誠実でいる。身の引き締まる思いです。最後に、服部さんが描く“これから”について教えてください。

服部:実は、2022年に「情熱大陸」(MBS)という番組に出演したんです。この番組にでることが長年の夢でした。式でも、「私を指名してくださったことが自慢になるように、いつか必ず“情熱大陸”に出てみせます!」って何度も宣言していた。ちゃんと言葉に出して努力していたら、夢は叶うものなんだなと。

今は、同じマインドを持ったヘアメイクスタッフを育てて、日本中のもっと多くの花嫁さんを担当できたら幸せだなと思っています。サロンを経営する“代表”という立場ですが、私はどこまでいっても経営者というより技術者でいたい。同じマインドをもつ人たちと、ずっと現場に立ちたいんです。

そして、「愛される人」でいたい。「売り上げ」とか「人気」って、戦略を立てて作り上げることもできるのかもしれない。でも「愛される」って、純粋な人間としての評価なんじゃないかと。私は花嫁さんたちの口コミでここまで来られた。心から感謝しています。そしてそれは、私が目指す「愛される人」に近づけている証拠なのかなって。

「誠実であれ」「愛される人であれ」。これだけはずっと忘れたくないです。

画像2: 弱さをさらけ出してもいい。誠実で、愛される人でいたい。

画像: <後編>弱い自分も隠さない。「誠実」は、必ず伝わるから。服部由紀子さん <後編>

服部由紀子

全国の花嫁様から引も切らずに指名予約が入るヘアメイクアップアーティスト。日本全国にとどまらず、海外まで依頼をこなす。講師として国内だけでなく海外でもレクチャー。2022年にはMBS「情熱大陸」へ出演し話題に。アクセサリープロデュースや美容商品開発等、トータルビューティーのコンサルタントとしても活躍。著書に「どうせ24時間印象に残る女になれ」(KADOKAWA)
Instagram:@ceu0116 店舗アカウント 東京店 @ceu.tokyo 名古屋店@ceu_wedding

取材・執筆:紡もえ
編集:山口真央
写真:梶 礼哉

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