「あなたは自分という人生のオーナーだ!」というセリフは使い古されているけれど、改めて考えてみると、私にとっての「働く」ことも、あくまで人生を経営するための要素のひとつだ、と気づいた。

私にとって仕事とはつまり、自分のスキルを発揮して “収入” を得る行為であり、その収入で楽しく“支出” をし、思い出や経験などの “資産” に変えて、それを糧にまた “収入” を得たり “支出” をより一層楽しむ——という、人生全体を円滑に経営するための一つのパーツに過ぎない。

そして、そう考えるからなのか、私は常にその「働く」を次々にマイナーチェンジして、人生の経営スタイルを変えていくことを、半分趣味として楽しんでいる。

かっこよく言ってみると、私はいわば、私という人生の “連続起業家” と言ってもいいかもしれない。

例えば、私は会社員になってすぐに副業を始めた。そのおかげで、収入と同じくらいストレスも支出も多かったけれど、その分、経験という資産も大量に増えた。だけどそのうち両立に限界を感じて、今度は独立し、収入を増やしながら、ヘルシーに支出を減らすことを目指した。そして金融資産が貯まってきたタイミングで、「今年は家族との時間を大事にしよう」と決めて、最近まで仕事を一気に減らし、家族との思い出という別の資産を重視する暮らしに変えた。

私はまだ社会人7年目だけれど、その間に「働く」内容も勤務形態もコロコロ変わっているし、自分の経営スタイル(収入・支出・資産のバランス)も常に変わり続けている。

きっと、終身雇用が大前提として働いていた昔の人にとっては、考えられない生活だろう。だけど、これからは、私のような人がどんどん増えていくのではないかと思っている。

というのも実際、終身雇用という制度は崩壊しつつあるし、世界で40万部以上売れている『LIFESHIFT―100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社)では、そもそも「学生→社会人→老後」の3ステージの人生は時代遅れになり、社会人生活の合間に再び学生期間を挟んだり空白期間を挟んだりするマルチステージを経験する人生へと変わっていくと説いている。

私の周りにも大学院生をしている友人が複数人いるし、仕事を辞めてしばらく放浪している人もいるし、家庭を優先した生活を選んだ後に会社員に戻った人もいる。そういったマルチステージに生きる人は、健康寿命が伸びて仕事人生が長くなること、世の中の不確実性が高まっていることなども影響して、これから更に当たり前になっていくだろう。

さらに、 “働かない” という選択はお金に余裕があってこそできるものだが、最近はそのお金の価値観さえ変わってきていると感じる。『DIEWITH ZERO』(ダイヤモンド社)という本が流行して「老後にお金をむやみに貯めすぎても幸せにお金を使えないぞ!今を楽しみ、思い出を残すことにも使え!」という考えを流通させているのだ。

さらに、我が国の経済状況を鑑みると、いわゆる “老後” を送る期間は短くなるに違いない。

現代人の一生はどんどん、「一気に稼いで、一気に使う」という単純で直線的なものから、「稼いでは使って、稼いでは休んで」と複数の局面を行き来するものになっている。

しかし、こういった生き方は一見楽しそうに見えて、コツがいるものだ。

この変化は、 “複数回、人生を決める決断をする” ことを強要する。でも、決断し、行動するって、面倒くさい。私だって、転職活動や引っ越し、できるだけ避けちゃうし。安定志向の人や決断が苦手な人にとっては、面倒な時代が来ているとも言えるのではないだろうか。

それに、とにかくお金を貯めてその資金を元に老後を過ごすより、必要なお金を少しずつ稼いで、未来も予測しながら人生の途中で少しずつ使うほうが難しい。それはさながら、ゲームでいうボス戦のようなものだから。一撃振るえば一気に敵を倒せるモブキャラ戦と違って、体力(HP)・楽しさ(MP)・資金やタイミングを見計らいながら、常に人生を考えて一つひとつの決断をしていかねば、ボスが倒れる前に、資金や体力(HP)が尽きてしまう。

しかし、一度起こり始めた変化には逆らえない。

だからこそ、私のように、何度も自分の経営スタイルを入れ替える——つまり「いくつもの人生を生きる」ことを楽しむ考え方をオススメしたい。

スキルを身に着けてキャリアが堅実に歩めそうになったら、あえて学生に戻ってみるとか。そこまでアグレッシブにならなくても、副業を始めて“収入” が多い人生を始めるのも、転職して“収入” を得る事業ドメインを変えるのも、あるいは家族優先の生活に変えて “資産” を増やす人生を始めるのだって、人生を変えることになる。

私の最近できた目標は、50歳で音楽活動を始めること。そのためには50歳までに音楽についてもっと勉強しなければならないし、50歳までに「やりたいことはやりきった」と思えるほど、今取り組んでいる執筆活動を成功させなければならない。

言葉の響きは良くないけれど、やっぱり「働く」ことは“人生そのもの” だと思う。何度も人生を生き直し作り直す一生はハイカロリーだけれど、どうせやらなければならないなら、楽しんだ者勝ちだ。

いくつもの人生を創造し、生きていくことを楽しもう。

どうせなら、高負荷な人生上等、そうやって何人分もの人生を味わい、 “不安定で不透明な世の中”
とやらを、楽しんで生き延びようじゃないか。


画像: 老後なんてない時代に生きているからこそ、いくつもの人生を楽しむように働き続けたい りょかち<第一回>

りょかち

1992年生まれ。学生時代より各種ウェブメディアで執筆。新卒でIT企業に入社し、アプリやWEBサービスの企画開発・コンテンツマーケティングに従事した後、独立。元『ユートラ編集部』編集長。現在では、コンテンツプランナーとして活動するほか、エッセイ・脚本・コピー執筆も行う。著書に『インカメ越しのネット世界』(幻冬舎刊)、『恋が生まれたこの街で』(KADOKAWA刊)。

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