純粋にガーナと現地の人々が大好きだから。「MAAHA CHOCOLATE」のチョコレートと、まっすぐ突き進んでいく


田口:そうですよね、私も実際にガーナに行くまでは「貧困地域」「大変そう」という言葉が先行していたのでよくわかります。事実として、募金などの支援を募るときは、その「大変そう」な面を打ち出すほうが支援が集まりやすいですし。「自分よりも恵まれない人がいる」と思うからこそ支援をしたくなるわけで。

でも、私は純粋にガーナという国と、現地にいる人々のことが大好きで仕方ない。ただガーナの人たちと一緒に働きたいし、ここで生み出されるチョコレートが本当に素敵なものだから、多くの人に知ってほしいんです。支援をしてほしいという気持ちは、そこにはありません。自信をもってお届けできるチョコレートだから、ぜひ食べてみてほしいなと。



田口:もともとSNSは得意だったわけでもなく、クラウドファンディングを募るために始めました。発信することで、たくさんの人に助けていただけたのだと思っています。

▲SNSを通じてガーナの現状を世界中に発信。現地の人々と過ごす田口さんはいつも笑顔に溢れている(ご本人提供)

当時はまだ大学生で、ビジネスのこともまったくわからないまま「ガーナにチョコレート工場を建てたい」だなんて言っていて……。でも、「わからないから教えてほしい」「私はこういう想いをもって行動を起こしている」「ひとりではできないから、助けてほしい」と発信したからこそ、ひとりでは不可能だったことが可能になっていきました。「MAAHA CHOCOLATE」は私のブランドじゃなくて、ガーナの人と、助けてくれたみんなの力で作り上げたブランドなんです。

今はガーナでの生活などもアップしていて、「ガーナって大変」じゃなくて、「ガーナって楽しそう」と思っていただけるような発信を心がけています。


田口:注目していただけることがとてもうれしい反面、すぐにお手元にお届けできないもどかしさも感じています。

「MAAHA CHOCOLATE」はひとつひとつが手作りですから、生産量についてはまだまだ試行錯誤の段階にあります。今後は、今より多く生産して早くお届けできるよう、ガーナ各地で工場を作っていけたらいいなと考えているところです。

いずれは「MAAHA CHOCOLATE」にとどまらず、ガーナ全体でチョコレートの加工産業が盛んになったらいいなとも思いますね。その中でも「MAAHA CHOCOLATE」は、食べた時に笑顔になっていただけるような、みんなから愛されるブランドに育ってくれたらなと思います。


田口:胸の中の好奇心に向かって、まっすぐ突き進むことだと思います。

十分な資金がなかった私でも、多くの方がクラウドファンディングで協力してくださったおかげで、工場を造り起業までできたんです。自分の夢に近づくためには、きっといろんな手段があるんですよね。だから、「興味があるけれど、自分にはできないし……」とあきらめてしまうのはもったいないと思うんです。

夢を現実にする手段のひとつが、私にとっては「発信」でした。私は特別な人ではなく、自分に足りない部分を発信していただけ。でも、夢に向かってまっすぐ行動していたから、たくさんの人に応援していただけたのかなって。

今後も、たくさんの人に応援していただく必要がありますし、応援していただいた方に恥じぬよう、これからも「みんなが笑顔になれるチョコレートをつくる」という夢に向かって、まっすぐ突き進んでいきます。


田口愛(たぐち・あい)

1998年、岡山県生まれ。国際基督教大学卒。19歳でガーナを初訪問し、カカオ農家の抱える課題を目の当たりにし「みんなが笑顔になれるチョコレートを作る」と決意。
2020年、Mpraeso合同会社を設立。2021年にはチョコレートのブランド「MAAHA COCOLATE」を立ち上げる。ニューズウィーク日本版世界に貢献する日本人30に選出。
MAAHA CHOCOLATE:https://twitter.com/ai_ghanacacao
Twitter:https://twitter.com/ai_ghanacacao

取材・執筆:山口 真央
編集:野風 真雪
写真:梶 礼哉