「嫌い」になった会社、迷い続けた数年間

この虚しさは、徐々に自分の営業パーソンとしてのスタイルに対する“迷い”となっていく。

同時に、自分が「言行不一致で尊敬はできない」と思っていた人が、会社で高い評価を受けている姿が目につき、会社に対しても違和感を覚えるようになった。

筋を通すーー。それは齊藤信介という人間の根幹とも言える部分。その違和感は、強く心を揺さぶった。

「2年目に入った頃から、ネガティブな部分が目につくようになり、会社のことが『嫌い』になってしまって。今振り返ると、自分の営業スタイルが確立できず、思い通りにいかなかったせいだったのかもしれません」

営業パーソンとしては、大きなご契約をお預かりするために、個人のお客さまから経営者のお客さまへ営業先を移行していくことが成功への近道だと聞いた。しかし、「それは本質なのだろうか」と疑問を抱き、自分の価値観に合わず、心がついていかない。そんな葛藤の中で、迷い、もがき続けた。

転機となったのは、現在の支社長との出会いだった。

「誰かの真似ではなく、齊藤さんは齊藤さん自身のやり方を信じればいいじゃないですか」

このシンプルな言葉が心に響き、何かが吹っ切れた齊藤さんは、自分だけの道、つまり「自分にとっての本質」を追求することを決めた。社内に“王道”とされるスタイルがあっても、それに頼らないことを決めたのだ。

野球で培った“感覚”を信じ、初めてお会いする目の前の人が、「自分と価値観が合うかどうか」を20分で見極める。それはこの先、その人の人生において自分がライフプランナーとして深く寄り添い続けられるかどうかを判断するために重要だと考えているからだ。そしてその“感覚“は、お客さまが意識していない将来への経済的なニードを掘り起こし、最適な保障を提案するスキルとしても活かされる。

「僕は人間の本質、生きることの本質と向き合っている人が好きなんです。だからお客さまは、学校の教員やお寺の住職なども多い。僕がたどり着いたのは、ただ成績を追いかけることではなく、自分を磨き続け、価値観を共有できる方々とのご縁をつなぎ、お役に立つこと。さらにお客さまになっていただけるのなら、その先の人生においても真摯に向き合い、長くお付き合いをしていくというものでした」

すると、齊藤さんの周りには価値観が合う方とのご縁が増え、やっとつかんだ自分だけの本質に自信が持てるようになった。気付けば、仕事が楽しくて仕方がなくなり、会社への愛情は以前よりも増していた。

生粋の読書家で、未知の世界を知ることが何よりの楽しみだという齊藤さん。大好きな日本酒を嗜みながら、地政学や宗教学の読書に没頭する時間は、彼にとってOFFの時間であり、自分を磨くONの時間にもなっている。

「何度も辞めようと思いましたが、何とか踏ん張れてよかったなと。また会社が好きになれたのは、自分が成長したからだと思います。プルデンシャルには尊敬できる先輩や仲間が大勢いるし、僕の個性を認めて応援してくれる最高の環境です。自分は自分のままで、人間力を磨いていけばいいんだと思えたことで、会社の良いところにもう一度、目を向けられるようになったんです」