「中学生で初めて日本に来たとき、必ずこの夢のような国に住むって心に決めたんです。」
――コンビニの便利さ、職人文化への憧れ、そして子どもに与えられる選択肢の数。インタビュー中、彼は自身が思う日本の魅力を、少年のような笑顔で何度も伝えてくれた。
オーストラリア出身のレニック・ニコラスさんは、東京メディカルアンドサージカルクリニックに勤務する医師でありながら、3人の子どもを育てる父親でもある。
レニックさんの日本への愛は並ではない。しかし「子育てをする環境については、まだまだ社会全体で改善するべき点がある」と語る。日本とオーストラリア、両国での育児経験があるレニックさんに、子ども、そして親が暮らしやすい社会を作るために必要なことについてお話を伺った。
中学生の自分は、日本の“コンビニ”を見て、「ここで人生を送りたい」と決断した
レニック:日本で暮らすことは子どもの頃からの夢だったんです。初めて日本に触れたのは小学生の時。オーストラリアでは日本語を学ぶことは珍しくありません。私が通っていた小学校でも、日本について学ぶ授業があり、その授業で「あいうえお」から文字を学んだり、お箸を使ってみたりしていく中で、「日本ってどんな国なんだろう?」と興味が湧いてきました。
「日本に絶対住みたい!」と感じたのは、初めて来日した中学校の修学旅行の時です。たった数日でしたが、東京や大阪、名古屋といった日本の主要都市をいくつかまわっている間はずっと感動の連続で。「必ずまた日本に戻って来る」と決意しました。
それから高校では3ヶ月間、埼玉県の朝霞市に留学。そのあと進学したシドニー大学でも日本学を専攻して、日本語や日本の文化、歴史について学びました。その時からずっと日本の大ファンですね(笑)
レニック:私が通っていたシドニー大学の医学部は、大学院に設置されています※。ですから、医者を目指す場合、私のように大学で何かしらを勉強した後、大学院で医師になるための勉強をする流れになります。※オーストラリアで医師免許を取得するには「学士号としての医学コース」、もしくは「ドクターコース」があり、大学によって設置されているコースが異なる
本当は医学部を卒業してすぐに日本へ行くつもりでしたが、当時すでに日本で医師として働いていた知り合いから「まずは自分の国で医師としての経験を積んでからの方がいいんじゃないかな」とアドバイスをもらって。研修を受け、総合診療医の資格を取得するまではオーストラリアで頑張ろうと決めました。
そして無事に総合診療医の資格を取得したその日に、来日。「よし、もうオーストラリアは終わり。日本に行く!」って感じで(笑)。それが2020年の1月でした。私は大学院生時代に日本人の女性と結婚していまして。来日する時には3人の子どもがいましたから、妻と子どもたちとやっと日本で暮らせるという気持ちでしたね。
レニック:色々あるんですが、コンビニがまず衝撃的でした。
初めて日本に来た中学生のとき、成田空港から東京までは車での移動でした。休憩がてら車から降りた瞬間、目の前にコンビニがあって。入ってみたら「何、ここ???」って、衝撃を受けて。日本人はそれが“当たり前”なので自覚がないと思うんですけど、日本のコンビニって本当に素晴らしいですよ!
フライドチキンとか肉まんとか、いろんな飲み物とか。本当になんでもありますよね。オーストラリアにもコンビニはあるけど、全く別物というか。日本のコンビニのバラエティの豊かさ、便利さは本当にすごい。だから今でも、自分にとって、日本の象徴はコンビニなんです。
レニック:コンビニには、日本の文化が詰まっていると思います。
日本に住んでいると「明日は何を食べよう、どこに行こう、何をしよう」と、やろうと思えばできることが本当にたくさんある。何事に対しても、選択肢が充実しているのは日本の特徴だと思います。オーストラリアとはレベルが違いますね。
それと、日本という国だけじゃなく日本人にも驚いたことがあります。世界中見渡しても、日本人ほど1つのことを極めようとする人たちはいないんじゃないかなと。例えば、料理人が美味しいものを作れるように上を目指し続けてきた結果、日本ではどこでも美味しいものが食べられます。
料理人に限らず、常に自分なりのベストを尽くそう、何かを極めようとする精神は、日本人の誇るべき特徴だなと思いますよ。私の心にはとても響きました。
レニック:もちろん!最初はびっくりしました。ちょっとでも時間があれば文献を調べてみたり、発表会に参加してみたりと常に活動しています。
オーストラリアの病院だと、ちょっと暇ができたらFacebookだとかYouTubeだとかみんなタブレットを触っている(笑)。もちろんこれはオーストラリアのリラックスした、おおらかな文化が根本にあるからなんですが。やっぱり日本人の学ぶ意欲や、自分を磨こうとする精神は見習わないとなと感じましたね。