お金を払って食べる自己肯定感が、子どもの表情を変えると信じて

▲(ご本人提供)思わずお腹が鳴ってしまいそうなメニューボード。だんだんでは、ワンコイン制(何円玉でもOK)で食事を提供しています。

 

近藤:増えていきましたね。食材はほとんど寄付で賄っています。野菜は「気まぐれ八百屋だんだん」で仕入れたものが多いですが、その他の米・肉・魚などは、ふるさと納税の返礼品の送り先として指定してくださって届くものを使ったり、企業さんからいただく寄付金で購入したり。

そういった方々のおかげで栄養のある料理が提供できています。コロナ禍を機に店内飲食からお弁当の手渡しに切り替えて、今もその形で継続しています。

近藤:最初は値段を決めて、「払えない人はいいですよ」という形で提供していたんです。でも、「いいですよ」と伝えていても、お母さんからもらったお金でお菓子を買ってしまったから払えないとか、そういう子がばつの悪そうな表情で、そーっとお店を出ていく。それをみて、そんな苦しい思いをさせたくないと思いました。

「お金を支払って堂々とごはんを食べているんだ」という自己肯定感はきっとあると考えていて、無料にはせずにワンコインという形にしたんです。

「なぜ無料じゃないんですか」と批判されることもあります。でも私は子どもたちの表情をみていて、無料である以上の意味があると思っています。

近藤:そうです。子どもって正直だから、気持ちが顔色や声、雰囲気によく出る。私自身が医療従事者だからなのか、そういった機微がすごく気になります。

お店に入ってきた時の顔つきがいつもと違うと、何かあったのかなとか。気になったら声をかけるようにしています。お店を出ていった後でも、追いかけて行って「何かあった?」と聞くこともある。子どもだけでなくて大人にもそうしています。

近藤:どうなんだろう(笑)。余計なお世話だと思っている人も中にはいるかもしれないし、わからないですね。でも何もなければそれでいいから。「お節介なおばちゃん」でいいのよ。心配する必要がなさそうな返事が返ってきたら、そっと見守るようにしています。

私は母を中学3年生の時に亡くしています。その時、周りの人たちが今まで通りそっとしておいてくれたことですごく安心したんです。“かわいそうな子”として特別に扱うのではなくて、いつも通りの接し方で支えてくれた。その心強さを知っているから、手助けすることと同じくらい、そっと見守ることも大切にしています。