みんなとは違う近道。心の声をひろって変化を続けていく
川口:最初は不安でしたね。でも、活動していく中で、多くの人が歩む道じゃない、正規ルートじゃない道でもなんとかなるだろうと思えたんです。
川口:この道で良かったかどうかはあまり考えたことがないんですが、自分のやりたいことへの最短ルートではあったと思いますね。誰もが何度でもやり直せる社会にしたい。相談に来てくれた人の選択肢作りをしたい。今は年間1,000件近くの相談があります。相談者がいる限りここで支援を続けていきたいですし、十分な支援ができるようにまだまだ考えることが山ほどあるなと思っています。
現状は、Homedoorの支援では満足な選択肢を提示できなかったり、ホームレスの性質が変わっていて対応が追いついていなかったりもします。具体的には、路上ではなくネットカフェや夜間営業のアミューズメント施設、友人の家を点々としている「見えないホームレス」や、若年層の方が増えている。そういった変化に合わせてアプローチの工夫をして、ひとつひとつの支援を振り返って精度を高め続ける。そんな挑戦を続けていきたいです。
川口:うーん、7割くらいかな。もっともっと提供できるものを増やしていきたいですね。今は今日もいらしていただいたここ、「アンドベース」が、幅広い相談者層に対応できる新施設になるよう力を入れています。ここでは就労支援セミナーやカウンセリングを受けられるようになっていて、2023年7月にオープンしてまだまだ走り出しですが、こういった挑戦を繰り返して、必要な支援を模索していきたいです。
川口:そうやって、その時何ができるかを一人一人が考えることで、問題って解決に向かっていくのだと思います。気づいた人が考えて、やったらいいなと。私も最初は「気になる」というところから、ホームレスの人を街中で見かけた時に何もできずに通り過ぎる大人になるのは嫌だなと思って続けてきたところがあるので。気になる、見て見ぬふりはしたくない。そんな気持ちを感じたら、無視せずに考えてみてもらえたら嬉しいです。
川口:自分の心の声を拾って、快適さを追求すること。生きる環境も、一緒に働く人も、心地いいものを選べることが大切だと思いますし、みんながそうできる社会であればいいなと思います。
NPO法人Homedoorの名前の由来は、2つ。
駅のホームに設置されている転落防止柵のように、人生というプラットフォームから落ちないための最後の防止柵でありたい。そして、ホームレスの人たちが心の居場所だと思えるホームへの、扉の役割を果たしたい。この由来を体現することが、きっと自分らしさです。
川口加奈(認定NPO法人Homedoor 理事長)
14歳でホームレス問題に出合い、ホームレス襲撃事件の根絶をめざし、炊出しなどの活動を開始。19歳でHomedoorを設立し、シェアサイクルHUBchari事業等で生活困窮者ら累計6000名以上に就労支援や生活支援を提供する。Googleインパクトチャレンジ グランプリ、人間力大賞グランプリ・内閣総理大臣賞等を受賞。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(2022/3)に出演。大阪市立大学卒業。1991年 大阪府高石市生まれ。
執筆:紡もえ
撮影:梶 礼哉