環境を変えるならば、リカバリープランも立てておくこと

滝沢:「環境を変える」というのは、多くの人にとって、「キャリアを変える」という意味を持つと思うんです。それを踏まえていうならば、変えた先の新しい環境で、いち早く価値を示すことが重要だと考えています。なにが価値になるかはわかりません。外から来た人だからこそできる提案をすること、誰よりも早く資料を作ること、ロジカルに考えられることなどさまざまです。なので、新しい環境のなかでなにが価値になるのか、とにかく見つけることが大事かもしれません。

滝沢:周りの人に聞いてみたらいいですよ。私も新卒の頃は、「自分で考えないと」という気持ちが強かったのですが、非効率でしたね。「自分の出すべき価値や強みを見つけるためには、人にアドバイスをもらった方が早いこともあります。私は2社目でそれに気がついて、自分でメンターを選び、1on1をお願いしていました。私の働きぶりについて、フィードバックしてもらったんです。

また、環境を変えるならリカバリープランも明確に持っておくこと。たとえば、私自身の経験から言うと、新卒で入社したコンサルティング企業の後に、上海の企業への転職をすることにしたのですが、キャリアとしては少しチャレンジングな選択かもしれないと感じていました。今後のキャリアにどう影響するのか、不確定な要素が多いかもしれないとも思っていて。

ただ、転職先で仮にうまく成果が出せなかったとしても、私はまだ26歳だったので、キャリアにとって大きなマイナスが発生することはないのかもとも考えました。ただし、あまりだらだらと挑戦をし続けるのも良くありません。「2年以内に自分が思うような成果を出せなかった場合、日本に戻る」というリカバリープランも用意していました。

滝沢:転職先の企業のことを信頼していなかったということではありません。むしろ逆です。でも環境を変えた先で自分は何ができるのか、何が起こるのかは、わからない部分も多いものですよね。一方で、今の自分にどんなキャリアや実績の積み重ねが必要かというのは、自分の目指す働き方や生き方を考えると、ある程度は見当がつくことも多いと思います。それを踏まえた上で、環境を変えた先の場所が、その時の自分にあまり合っていなさそうな場合にどうするかまで考えておいた方が安心だと感じます。

環境を変えるときって、ハイになりやすい気がしていて。でも、それは危険な状態。だから冷静になって、リカバリープランを立てたうえで行動するのが肝心だと思っています。

滝沢:そうですね。でも、慎重になる必要はあるものの、その時々で自分がワクワクできるかどうかも大切にしてもらいたいです。私自身、いつもチャレンジングでワクワクできることを選び続けてきました。その一歩一歩が、大きな環境の変化にもつながってきたと思います。

「hoppin」という会社名も、「ホップ・ステップ・ジャンプ」のホップの現在進行形であるing系、つまり小さな一歩を踏み出し続けられるようにという意味から名づけました。それが、私の「自分らしく生きる」ということでもあるのかもしれませんね。

滝沢頼子

株式会社hoppin 代表取締役 CEO。東京大学卒業後、株式会社ビービットにてUXコンサルタントとして働き、上海オフィスの立ち上げも経験する。その後、上海のデジタルマーケティングの会社、東京にてスタートアップを経て、中国やインドのビジネス視察ツアー、市場リサーチや講演、勉強会、UXコンサルティングなどを実施する株式会社hoppinを創業。2022年からはインドのバンガロール在住。

取材・執筆:イガラシダイ
編集:山口真央