健康で美しくあり続けるために、自分にとって必要なものをセレクトできる知識を身に付けてほしい。

坂部:お若いから今はまだそれで成り立っているかもしれませんね。けれど、少しでも「これって身体に良くないかも」と感じているなら、まずは“小さな何か”から変えてみてほしいです。

いきなり食生活を全て変えるのは難しいですよね。だったら、「今日はちょっと丁寧にお出汁をとってみた」「旬のお野菜でサラダを作った」「栄養を正しく摂りたいから、電子レンジではなくお鍋でおかずを温めた」……。そんな小さなことからでもいいんです。

坂部:身体を変えるためには、正しい方向に一歩踏み出すことが大事なんです。だからこそ、フードドクターのメソッドを立ち上げたんですよ。

このメソッドは、医師や栄養士、理学療法士の知見と、プロの料理人が教えるテクニックをどちらも自分のものにすることができます。毎日の小さな一歩でも、自分の身体の声を聞いて、身体に優しい選択ができるように知識とスキルを身に付けてほしいんです。

たとえば、「ああ、今日は甘いものを食べすぎちゃった……」と罪悪感を覚えて夕食を抜いたり減らしたりする、そんな経験はありませんか?確かに摂取カロリーは減りますが、それでは食べてしまった糖質自体は蓄積されたままです。そんなときの最善策は、摂りすぎてしまった糖質を代謝してくれるものを食べること。具体的には、豚肉や大豆製品、玄米などのビタミンB1が含まれる食材と、生野菜やフルーツなどから酵素を積極的に採ることです。そういった知識の上に、簡単に料理が思いつくスキルがあれば、あっという間に代謝がされやすい食事が作れます。

▲フードドクター育成コース「テーマ:美肌」のメニュー。小麦粉を使わず食物繊維を豊富に摂れるデトックスパン、オイルを使わないタルタルソースで作るサーモンのソテー。

“医食同源”という言葉がありますが、健康で美しくいたいなら、「何が今日の自分にとって必要なのか」を判断する必要がある。体質やライフスタイルなどによって、必要な栄養素は皆それぞれです。だから、自分にとっての正しい選択ができるようになってほしい。

私の生徒さんには、モデル、アスリートや著名人の方も沢山いらっしゃいます。みなさん、「自分が持つ能力や美しさを最大限に活かしたい」という気持ちがあるからうちを選んでくださっているのかなと思いますね。

坂部:まずはフードドクターを、ワインでいうところのソムリエのような資格にしていきたいです。今はまだ認知度が高くはありませんが、フードドクターとして食と健康に関する知識やスキルを得ることで「私は食医学の専門家です。あなたとあなたの大切な人の健康美を一緒に作りましょう!」と胸を張れるような資格にしていくのが私の使命です。

近年、人間の平均寿命ってすごく伸びていますよね。でも残念ながら、「寿命=健康」ではありません。私はこれをできるだけ「=(イコール)」にできたら素敵だなって思うんです。ずっと健康でいるためには、「食事」の役割はとても大きい。食べ方を変えると生き方が変わる。生き方が変わって丁寧になると自分に自信が持てるようになる。食べ方って人生そのものですから。

だからこそ、食の知識とスキルを広めることで、一人でも多くの方が、心も身体も健康に、ずっと笑って過ごせる人生を送ってほしいなと心から願っています。

坂部幸

料理研究家・一般社団法人日本フードドクター食医学協会(JFDA)代表理事。辻調理専門学校を卒業後、都内のフランス料理店やイタリア料理店、ワインショップに勤務。そのかたわらで休日は料理教室を開き、2003年には現在の「PODERHYSH KITCHEN(ポデリッシュキッチン)」の前身となる「Four leaves clover kitchen(トレフルキッチン)」を設立。現在はメディアでのフードコーディネートほか、BRUNO等の調理家電の監修など、幅広く活動。


取材・執筆:山口真央
写真:梶礼哉