誰もが「ちがう」想いや悩みを持って⽣きています。でも、もしかしたら誰かが導き出した答えが、あなたの答えにもなるかもしれません。「根ほり花ほり10アンケート」では、さまざまな業界で活躍する“あの人”に、10の質問を投げかけます。今回は、熊本県のマスコットキャラクター「くまモン」などを手掛けたクリエイティブディレクター・水野学さんが登場。
きっと、「みんなちがって、みんなおんなじ」。たくさんの花のタネを、あなたの心にも蒔いてみてくださいね。
水野学(みずの・まなぶ)
クリエイティブディレクター/クリエイティブコンサルタント。good design company 代表。ブランドや商品の企画、グラフィック、パッケージ、インテリア、宣伝広告、長期的なブランド戦略までをトータルに手掛ける。主な仕事にPanasonic、相鉄グループ、熊本県「くまモン」、三井不動産、再春館製薬所、Oisix、久原本家「茅乃舎」ほか。世界三大広告賞の「Cannes Lions」金賞、「The One Show」金賞、「Clio Awards」銀賞ほか国内外で受賞歴多数。2024年発表の「グローバルクリエイティブランキング」では「エグゼクティブクリエイティブディレクター」ランキングで日本1位、アジア太平洋2位、全世界で30位にランクイン。主な著作に『センスは知識からはじまる』『世界観をつくる「感性×知性」の仕事術』〈山口周氏との共著〉(朝日新聞出版)ほか。
小さな頃は、活発でいつも走り回っているこどもでした。でも、小学校5年生のとき交通事故に遭い、「一生歩けないかも」と言われたほどの大けがを脚に負って、入院生活に。病室では、方眼紙に家の間取りなど図面を描いて退屈をしのいでいました。今思えばあの体験が、「デザイン」というものに意識的に取り組んだはじまりだったのかもしれません。気付けば美大へと進み、グラフィックデザイナーになり、26歳で独立。その後、さまざまなブランディングを担当させていただくなかで、広告・プロダクト・企画・内装・映像など、少しずつ仕事の幅が広がっていきました。
「曖昧なものをかたちにする人」。
クライアントとの打ち合わせで、「おっしゃっているのはつまり、こういうことですか?」「こういうイメージですか?」と、言葉やデザインで何らかのアウトプットをした際、「そう!まさにそれが私(たち)の目指していたことです!」と喜んでいただけることがあります。そういうとき、デザインやクリエイティブは曖昧なものを具体的なかたちにしていくためのプロセスなのだなあ、と改めて感じますし、そこにとてもやりがいを感じています。
「51:49」で考える。
100%の自信を持って「絶対にこっち!」と言い切れるような人生の岐路は、少なくとも自分の人生においてはそうそうなかったと思います。いつも、不安や迷いを抱いた上で、「でも51:49で考えたら、こっちの方が51いいと思う」「51、こっちに進みたい」と思えるほうを選んできました。100%の自信を持てる決断をしなければと思うと、決断に踏み切ること自体を躊躇してしまいますが、迷うことに労力を割くよりも、決断したあとに「選んだ方を正解にするために努力する」ことのほうが重要かなと思っています。
どうせ行くのであれば、行きたくないと考えても仕方ないので考えない。諦める(笑)。でも、一度全力でやってみて、ベストを尽くした上でもやっぱり自分の居場所はここじゃないと思ったら、転職を前向きに考えてみるのもありではないでしょうか。
僕も含め、大人って小さい子に対してつい、「将来の夢は?」「将来は何をやりたいの?」とか聞いてしまうのですが、実は「あの質問、あまりよくないんじゃないか……」と思っています(笑)。 「自分がやりたいこと」も大切ですが、「自分が得意なこと」を活かすことのほうが、人生においてはるかに重要なのではと思っているからです。
「誰からも必要とされていないけれど自分はやりたいこと」をやり続けるって、相当な覚悟が必要です。でも、「得意なこと」は——仮にそれが今やりたいと熱望していることとは違っていても——周囲に喜ばれ感謝されていくうち、徐々に自分の武器となり、やがて、それが「好き」にもなっていくように思います。
やりたいことが見つからないときは、「自分の得意を見つけて活かす」ことに注力してみたらいかがでしょうか。
僕自身、とても心配性で、常に不安が消えないタイプの人間です。あれが心配、これが心配といつも思っています。
僕の、不安への対処法はただひとつで、「諦める」。不安をゼロにすることはきっとできないので、諦めて、たくさんの不安を抱きしめながら、楽しく生きていけばいい、と思っています。たとえば、真っ暗な洞窟にいるとしましょう。明かりが必要だから火をともそう、ここが滑るから枯れ葉を敷こう……と、不安や不満が多い人の方が、気付ける数も多いはずです。不安をゼロにしようとすることよりも、不安をひとつずつ解消しようとする気持ちの方が、大切な気がしています。
時間とお金を並列に考えたことは、あまりないかもしれません。時間は誰しもに等しく平等で、お金持ちも力持ちも与えられた時間は同じ。だから、「時間」はすべての頂点だと思っています。お金は、時間のために使うという発想かもしれません。
「努力は裏切らないから、そのまま進め」。
人生には努力が実らないこともたくさんあるけれど、仕事だけは、比較的、努力した分が結果につながりやすいものだと思うので。あとは、「人生、先に進めば進むほど周りの人に恵まれていくから、安心していいよ!」と伝えたいです。
旅をすることと、旅先でその土地の美味しいものを食べることが、人生の大きな楽しみのひとつです。将来もう少し時間に余裕ができたら、あちこちを旅したいです。
「できる限り、正直でありたい」と思っています。
仕事には、さまざまな制約も事情もつきものですが、それでも、よくないものはよくない、いいものはいいと正直に判断して、その分、少しでもよりよいものを生み出せるように全力で努力し続けたいと思っています。
今回は、クリエイティブディレクターの水野さんに回答いただきました! 私がとくに取り入れたいと思った水野さんの考え方は、③の「『51:49』で考える。」でした。日々のすべての決断で100%の自信を持つことはとても難しいですが、それでもいいと背中を押していただいたように思います。皆さんにとっても心に残るメッセージが見つかればとてもうれしいです。