「好き」より「得意」を見極めて、仕事にしてみる。それで人の役に立てたなら

だいじろー:もしも苦しい状況にいるならば、「得意なこと」を仕事にしてみてもいいかもしれません。ぼくにとっての英語は「好きなこと」でもあるけど、それより重要なのは「得意なこと」だったということ。これが、「得意じゃないけど好きなこと」だったらしんどかったと思います。

たとえば、ぼくは将棋や地理も好きです。実は最初、将棋系YouTuberでもやろうかと思っていたくらい。でも、得意と言えるほどではない。上には上がいるので、それらを仕事にしていたらきっと大変な思いをしていたはず。

その点、英語は得意で、自分には優位性があるとわかっていました。仕事にしてみたらやっぱり楽しいですし、順調にいっているとも思います。

だいじろー:でも、得意なものって自分ではなかなか気づけませんよね。自分にとっては当たり前にできることだったりするから。だからまずはいろんな人と出会って、コミュニケーションを取ることが大事だと思います。すると、ふとした瞬間に、「きみ、これが得意だよね」なんて言われることがある。そうして初めて、自分はなにが得意なのか気づけるんです。

仮に無人島でたったひとり暮らしていたら、得意不得意なんて一生わからないじゃないですか。集団のなかで生きているからこそ、背が高いとか低いとか、差が生まれるわけで。だから、たくさんの人と交流して、耳を澄ませておく必要があると思います。

そしてやっと「得意なこと」に気づけたら、それをとにかく磨いていくこと。ぼくも英語が得意なことにあぐらをかかず、ちゃんと磨いてきましたから。

だいじろー:インターナショナルスクールより気軽で、なおかつ通うだけでバイリンガルになれるような幼稚園を作りたいと思っています。大人になってから異言語をネイティブレベルまで身につけるのって、本当に大変なんですよ。でも、幼少期に言語のシャワーを浴びればずっとスムーズに習得できます。現状、これが一番の夢です。みんなの子どもがネイティブな英語を喋り出すのって、なんかワクワクしますしね。

ぼくは基本的にベクトルが自分に向いていて、面白いことをして生きていきたいタイプです。でもさまざまな経験をしてきて、やはり、人に感謝されるようなことをしないとお金をもらえないし、社会の一員として生きている楽しさを味わえないんだ、と気づきました。

YouTuberとしての活動以外に英語の発音指導もしていて、そこで「だいじろーさんのおかげで発音が綺麗になりました。ありがとうございます」なんて言われることがあって。その瞬間、なにかに貢献できた気がして、震えるほど嬉しくなる。

これからも、自分の得意を活かしながら他者のためになる仕事をしていきたい。それで感謝してもらえることが、一番ハッピーなんだと思います。

だいじろー(菊池大二郎)
英語発音コーチ、YouTuber。立命館アジア太平洋在学中に香港理工大学とヘルシンキ大学に交換留学。新卒で電子部品メーカーに半年勤務後、タイに移住し7年間過ごす。帰国後、2019年に発音系YouTube チャ ンネルを開設し現在登録者80万人。音声学・音韻論を独学で学び、YouTubeにて各国の発音の違いを解説したり、英語発音指導をメインの活動としている。

執筆:イガラシダイ 撮影:梶 礼哉