専業主婦だった私も、介護中だった私も活躍していた。きっとあなたも、もう輝いている

藤﨑:それが蓄積されて、人生が変わる瞬間が生まれていった気がしますね。居酒屋で起業した頃から「経営者になるのが夢だったんですか?」と聞かれるようになったけど、そんなことなくて。就業経験の少ない自分がどこかに勤めても家族を養えないだろうけど、起業すれば自分の頑張り次第で十分な収入が得られると考えただけです。私としては生活のために必然の選択だったのよ。周囲からは無謀に見えたかもしれないけど、やってみなきゃわからないじゃないですか。

藤﨑:信じられない原因のひとつは、頑張りの目標が高いことだと思うのよ。私は「女性の活躍」の文脈で「すごいことを成し遂げてきた人」というふうに取り上げていただくこともありますが、自分としては全然違います。目の前のハードルをひとつひとつクリアしてきただけなんですよ。

109で店長をした時も、カーテンが汚れているからカーテンを新しいのに変えよう、とか。それくらいだったら誰でも頑張れないですか?そんなことを繰り返していたら売上が倍になっていました。最初から「この店の売上を倍にしよう」という目標を掲げていたら、頑張れなかったかもしれない。でも気づいたことをこなしていくことはそんなに難しくなかったように思います。

皆さんも「資料の印刷を誰よりも速く美しくやろう」とか「みんながきつそうなときは、私は笑っていよう」とか、なんだっていい。きっと身近にできることがあると思います。そしてそれをまずは「やってみる」。何よりもアクションすることが一番大事なんじゃないかな。

藤﨑:よかったです。気づいたらすごいところまでたどり着いているかもしれないですよ。

それからもうひとつお伝えしたいのは、「仕事と自分自身は分離して考えたほうがいい」ということ。先日新卒の年代の方とお話をした際に驚いたのですが、就職活動中のアドバイスで「自己実現のために仕事を頑張りなさい」と言われたんですって。でもそれでは苦しくなっちゃうんじゃないかな。

仕事は仕事だから、その中で注意されたことは、あくまで仕事の話です。でも自己実現のために仕事をしていると、注意されたときに自分自身を否定されたような気持ちになる気がするんです。仕事は仕事、私は私。そう考えると楽になることもあると思いますよ。仕事の人間関係もそう。気の合う仲間は大切にしたらいいけど、そうでない人に対して仕事以外で悩む必要はない。

私は仕事で嫌なことがあっても、仕事と自分を切り分けているから深みにはまらずにいられます。どんなことがあっても自分を否定されているわけじゃないから、仕事だけにフォーカスして悩むことができた。もちろん、仕事で自己実現したいという人を否定するわけではありませんよ。そういう方はぜひ頑張って、叶えてほしいと思う。でも仕事じゃなくても自己実現はできるから、無理に仕事と自分を結び付けなくても大丈夫です。

藤﨑:そう。でもそう思わせない空気が今の社会にはありますよね。最近は、女性の活躍って要職に就くことと結びつけられる傾向があると感じていて、あまりよくないことだと思う。

どんな場所にいても、就職していなくても、自己実現をしてその人らしい輝きを放つ人はたくさんいます。今私は社長を務めていますが、専業主婦だった頃の私も、介護をしていた頃の私も頑張っていたし、活躍していた。どんな人も、もう活躍しているんです。

藤﨑:「私は家でも頑張ってたし、だから社会でだって頑張れる」と思ってこれまで働いてきました。皆さんも今活躍できているんだから、他のこともきっとできると思いますよ。

私自身、まだまだやりたいことがあって、最近は児童養護施設のボランティアに参加しています。児童養護施設で育った子は18歳で退所しなくちゃいけなくて、退所した後ってひとりぼっちになりやすい。進学や就職をしても続かないことも少なくないみたいなんです。退所後の自立のために、退所前の子どもたちに対してできるサポートがないか、活動の中心になっている友人と模索しています。

「やろうと思えばできないことはない」

起業するときに相談した人からもらった言葉ですが、実際経験してみて私もそう思います。これからも変わらず目の前のすべてに心を尽くして行動を続ける。それが私らしさです。

藤﨑忍

1966年東京都生まれ。39歳の時に就職経験ゼロの専業主婦からSHIBUYA109のアパレルショップ店長を務め、東京・新橋で2店舗の居酒屋を経営した後、2017年 ドムドムフードサービスに入社。2018年 ドムドムフードサービス 代表取締役社長に就任。
2022年6月 株式会社神明ホールディングス社外取締役就任。2022年12月WOWOW放送番組審議会委員就任。2024年6月 株式会社WOWOW社外取締役監査等委員就任。

執筆:紡もえ 撮影:梶礼哉