継続することで、「やりがい」と巡り合うかもしれない

内多:「もみじの家」は定年退職しました。でも関係が終わったわけではなくて、いまは「シニアアドバイザー」という肩書で関わっています。出勤することは少ないですが、イベントを開催するときに手伝ったり、相談事があれば聞いたり、といった役回りです。

その上でいまは、社会福祉法人の手伝いもしています。先程、川崎市の自閉症の男性のお話をしましたよね?その方のお母さんが社会福祉法人の理事長をされていて、生活支援者としてお手伝いしています。

内多:巡り合わせですよね。その男性の取材をしたのはまだ30代の頃でしたが、まさか定年後にこうなるなんて想像もしていませんでしたし。そもそも障害福祉の世界に足を踏み入れたときだって、当初は「このジャンルで一旗揚げたい!」というような不純な動機もあったんですよ。でも、追いかけていくうちに、これが自分のフィールドだと実感しました。

だから僕の場合、ある程度継続的に仕事を続けた結果、巡り合わせもあって、チャンスもあって、やりがいを見つけた。宝くじに当たったようなものです。だから、なかなか出会いに恵まれなくても、それを嘆いたり、落ち込んだりする必要はないと思います。巡り合いやチャンスを信じて、継続的になにかを続けることが大事かもしれません。

内多:そうですね。今、老後がすごく楽しみです。「ウルトラユニバーサル野球大会」を通して、障害があっても、テクノロジーを駆使すればいろんなことができると知ってもらえる。そうすれば、彼ら彼女らが社会参加する選択肢も増えるじゃないですか。

テクノロジーの発達によって時代はどんどん変わっていて、あとは僕らが追いつくだけなんですよ。僕はその一助になりたい。それが老後の展望です。今後もやることがたくさんあって、すごく楽しみですね。

▲内多さんに、自分らしさを表す言葉を聞くとこんな答えが返ってきた。社会的に働きかける、まさに内多さんを体現する言葉だ

内多勝康

1963年、東京都生まれ。東京大学教育学部卒。1986年、NHKにアナウンサーとして入局。『首都圏ニュース845』『生活ほっとモーニング』『クローズアップ現代』などのキャスターを務める。2016年3月に退職し、国立成育医療研究センターを母体とする「もみじの家」ハウスマネージャーに就任。現在は社会福祉法人あおぞら共生会で障害者の支援にあたっている。著書に『53歳の新人~NHKアナウンサーだった僕の転職(新潮社)』など。

執筆:イガラシダイ
写真:梶 礼哉