シェアハウス、カーシェア、スキルシェア……。現在様々なシーンで広がっている “シェア”文化。その概念があまり身近でなかった頃から、「シェアの可能性」を信じ活動してきた人がいる。シェアリングエコノミーを通じた新しいライフスタイルを提案する、石山アンジュさんだ。

彼女は幼い頃から「シェア」や「平和」に強い関心を持っていたという。大学時代には「世界平和とは何ですか」と書いたスケッチブックを傍らに、海外をも歩いて回った。

「シェア文化は、世界平和にもつながると信じている」と語る彼女は、現在シェアリングエコノミー協会代表理事を務め、公と民間のパイプ役として、人々のライフスタイルに変革を起こし続けている。

社会に新しい価値観や概念をもたらしている、石山アンジュさんの“想い”のルーツは、どこにあるのだろうか。

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「世界平和とは何か?」を世界に問うた大学時代とその原点

石山:幼少期の両親の離婚がきっかけになったと思います。普通だったら、子どもは「お父さんとお母さんが愛し合っていて自分が生まれた」という存在意義を持つと思うのですが、私の場合は違ったんですよね。

だから、その方程式が崩れた時に「自分がこの世に生を持った意味ってなんだろう?」ということをものすごく考えていました。そうやって考えた結果、「人生というのは、社会に対して何か働きかける使命のようなものを持って生まれたんじゃないか」という結論にたどり着いたんです。これは、今でも変わらない考えです。

当時、父の影響で戦争映画をよく見ていたこともあり、そこに付随して世界の貧困の問題などにも興味を持っていました。それらが繋がって、世界平和に強く興味を持つようになったんです。

石山:学生時代は戦争映画や世界平和に興味を持つ中で、ジョン・レノンやマイケル・ジャクソンのような、“平和”を表現する「ピースメッセンジャー」と呼ばれる活動家に憧れを持っていました。

私は小さい頃からダンスや音楽などを通じて、表現することが好きで。高校生の頃には当時流行っていたブログを書くことにも夢中になりました。自分が考えていることを「発信」したいと思ったんです。

そんな中で「ピースメッセンジャー」という肩書きを知り、表現や言葉、発信を通じて、私は「平和」というものを世の中に伝えていきたいんだと気付いたんです。表現することで人に関心を持ってもらったり、同じように思いを馳せたり、痛みを分け合ったり……。そういった形で共感の輪が広がるだけでも、世の中が変わっていくと今でも信じています。

石山:むしろ勉強したことによって、「学校で学ぶようなことだけじゃ、世界平和は実現できないかもしれない……」と、一度絶望しました。

政治も経済も、最大公約数で何かを解決することはできても、“誰一人取り残さない”というような平和の実現は、まだ成し遂げられていないですよね。しかも、その平和の実現自体に答えがあるわけじゃない。

その中でも「人が希望を抱き続けるとしたら何が『光』となるのか?」が知りたくて、『あなたにとって世界平和とは何ですか?』と書いたスケッチブックを持って、海外の街角で人々に聞いて回るプロジェクトを始めたんです。

石山:いえ、驚いたのは「世界平和について考えていることはみんな一緒だった」ということです。

普通、世界平和のために社会問題を解決しようとした時には、政治や外交の政策をどうするか、とか経済政策をどうするか、といった話になるかと思います。

でも、個人個人に「世界平和とは何か?」を聞いてみると、「家族を愛すること」や、「身近な人を愛すること」だったり、「優しさを持つこと」だったり……そういう普遍的なものが共通していたんです。

石山:そうですね。基本的に争いというのは、「自分と他者に境界線を引くこと」にあると思うんです。自分と他者という境界線があって、そこに国やイデオロギーの違いが加わり、じゃあどっちが利益をもらうのかという争いがあったりするわけです。

その違い自体は現実としてあるけれども、それを埋めようとする希望というのは、優しさや思いやりだったり、「相手のことを身内だと思ってみる」といった姿勢だったり、そういうことにあるんじゃないかと思いました。

石山:私は常に意識した方がいいと思います。この社会のなかで、「自分一人で自立して生きている」、というのは幻想だと思うから。

毎日食べるものも誰かが作っている。じゃあその食材を作っている国が途上国だとしたら、その途上国を生み出してるのは先進国のせいかもしれない。かつ、そういう構造を生み出しているのも一人一人の責任だと思うし、全てが繋がっている。

だから社会の隅々まで想像を働かせて「自分には何ができるか?」と考えることを、一人一人が諦めない世の中であるべきだと思います。