自分らしい選択肢のために、心にちょっとだけ柔軟剤を入れてみて
美有姫:怖くはなかったですね……。そもそも印象評論家になったのは、都内のホテルのVIPラウンジでマネージャーをしているときに、今の事務所の社長に声をかけられたことがきっかけです。利用客の政治家の先生方に、図々しくもどうしたら印象が良くなるかアドバイスしている私を見て、「アメリカでは大統領にアドバイスするプロの仕事。一般向けに体系化していないジャンルだからこそ、チャレンジしてみたら?」と声をかけてくれて。
最初は断っていたんですが、毎日のように誘われる中で「道なき道を行くのは好きだし、楽しそうかも」と考えるようになりました。それに、誰もやってないことをやればライバルがいないのもいいと思いました。誰かと闘うとか、誰かを蹴落とすとか、そういうことは得意じゃないので、一人で自由にできるのがいいなと。だから怖いとは思いませんでした。
ただ、ライバルがいないということは、自分のやっていることが正しいかどうか、誰かと比較ができないということでもあります。だから、自分のやろうとしていることが客観的に見ても正しいかどうか、常に自分に問いただすようにしていますね。
美有姫:このゼミでは「統一美」を掲げています。みんなで同じスーツ(制服)、髪型、ヒールの高さまで揃えて、印象のよさや美しさをチームで追求する印象行動学の研究です。それに挑戦したいという学生たちが毎年入ってきます。みんなこの写真のメンバーになりたいんですよ(笑)
▲ご本人提供
「この多様性の時代に!?」という意見もあるかもしれませんが、「自分がやりたくてやっている」ならそれは自分らしい選択のひとつだと思います。ゼミの年度初めにはいつもみんなに伝えるんです。「卒業する頃には、印象や笑顔がずば抜けた人になれるよ。私も自信を持って社会に送り出すから、自分の選んだ道を信じてやっていこうね」と。
そして、夏休みや春休みなどの長い休みの期間は自由にやってごらんとも伝えています。髪の毛を奇抜な色にしてもいい、驚くほど長いネイルにしてもいい、まつげをクジャクみたいにしてもいい。そうやっていろんな自分を試してみて、授業では統一美に切り替える。どれが自分にとって心地いいか、楽しいか、それをお試しできるのが大学時代だから、学生たちにはぜひいろいろ試して“自分”を見つけてほしいと思っています。
美有姫:どんなに努力しても自信が持てない人に必要なのは、さらなる努力じゃなくて、頑張っていることを自分で認めて、褒めてあげることだと思います。そして、自分のことを好きだと思えるようになるには、何をしたらいいんだろうと考えるところから、改めてスタートしてみてほしい。
もうひとつ必要なのは、心と行動を一致させてあげること。例えば、自分では痩せなくていいと思っているのに、人に言われて痩せようとするのは心と行動が一致していません。誰かの言葉でふらつくのではなく、「私はこれを求めている」「私はこんな自分になりたい」という気持ちを大事にすべきだと思います。
自信を持てない原因が何なのか見極めて、分析して、それに対して努力をしていけばいい。そうすれば必ず変化は起きるし、努力をしている自分が愛おしくなってきて、自分を認められるようになります。
美有姫:私も気づかないうちにがむしゃらになりすぎてしまうことがあるので、自分を俯瞰してみる時間を意識的にとって、自分に「ちょっとだけ柔軟剤を入れる」ようにしています。洗剤のように必ず必要なものではないけれど、プラスアルファのもの。一生懸命頑張るだけじゃなくて、旅行をしたり、お花を飾ってみたり、何か普段とは違うことをちょっと入れてみることがゆとりになって、自分を柔らかくしてくれます。
あとは、苦しいときこそ鏡を見て“全力スマイル”をする回数を増やすこと。奥歯が全部見えるくらい全力で。笑顔の自分の姿を目にすることって意外と少ないんですよ。だから鏡をみて自分の笑顔を確認する。笑っている自分をみていると「楽しいかも」「まだ笑えるんだからなんとかなるかも」と不思議と思えますよ。
美有姫:はい。娘と一緒に、要介護レベル5になった両親を介護する生活を5年間続けたときもそうでした。本当に大変で「いつまで、どこまでしてあげられるんだろう。どんなにやっても足りていないんじゃないか」と毎晩泣いていた。それでも朝になったら笑顔を忘れずに過ごしていたことで、両親は仲良く夫婦寄り添うように、なんとたった数日違いで本当に穏やかに天国へ旅立つことができました。
そうやって笑顔に助けられた経験がたくさんあるから、今もしんどい時は、ぐぐっと口角を上げて、笑顔のまま「しんどい~!」って叫んでいます(笑)。笑っていれば、笑えていれば、私はまだ大丈夫だと思えてくるから。じつは科学的にも証明されていることなんですよ。