毎日を後悔せず終えるために、苦しいときこそ心を切り替える
美有姫:本当に楽しかったです。一方で、印象の大切さを感じる悔しい経験も度々ありました。例えば機内での配膳業務。機内では必ずCA同士2人がペアになって、席の右側・左側と担当をわけて接客をします。当時の私のペアは、とてもお綺麗な先輩でした。均等に食事を配っていくはずなのに、みんな私ではなく先輩に注文しようとして、私が配る食事は全然なくならない。なぜかと考えると、先輩は所作までもとても美しく目立ち、一方で私は当時、周囲から見た様々な印象にまだ気を配りきれていませんでした。
「私は選ばれていない。選ばれないことで、業務がスムーズに回らず迷惑をかけている」と感じ、選ばれる客室乗務員になろうと反省したんです。
美有姫:自分でも好きだなと思う部分です。私、その時求められることや、他者から「こうしてほしい」と言われることに対して反骨心がまったくなくて。素直に「そうしよう」と思って、その人に対して全力で動けるんです。
美有姫:「考え方が違うのは仕方がないよね」と切り替えて、自分ができることを探します。あくまでも、自分がどう動くかを考える。相手を変えようとは思わないです。この切り替えの早さには、家族にもいつも驚かれているくらいです(笑)。嫌なことを言われても、自分の人生全体や世界に視野をスッと広げて「怒ったり落ち込んだりするより、別のことにエネルギーを使おう」と切り替える。それで終わりです。
うじうじしていたら、もったいないなと思っちゃって。私は毎日家を出るとき「今日も後悔しないように生きよう」と思って玄関を開けます。誰と会っても、絶対に楽しい気持ちで終わりたい。だからすぐに切り替えます。
美有姫:私も切り替えがうまくできるようになったのは、子どもたちを産んでからかな。自分の想像している通りには動いてくれない存在を育て、守っていかないといけないですよね。そんな初めてだらけの生活の中では、心を切り替えられないと自分が落ち込んだり、子どものせいにしたりしてしまうなと思って、意識して切り替えるようになりました。
それにうちの子は小さい頃、仕事に行く前に「行かないで!」って大泣きして今生の別れレベルのバイバイをしたのに、忘れ物を取りに帰ったらケロっとしてたんですよ(笑)。「さっきの涙は演技だったの!?」と騙された気持ちにもなったけど、そうか、この手があったかと思いました。私たち大人も、すぐに切り替えて笑顔になれればきっともっと生きやすい。仕事から離れて子育てをしていた約5年間は、そんなふうにたくさんの気づきがあった期間であり、人生の中でぐっと踏ん張った苦しい時期でもありました。
美有姫:病気で日本航空を退職した後、ふたりの娘に恵まれましたが、その後すぐに離婚。なんとか子どもたちを育てようと、生活するためにできることはすべてやりましたし、今思い返すと地獄のような苦しみでした。でも私は、我慢強すぎて、当時は自分が苦労していることに気づかなかったんですよ。気持ちの持ち方次第で何でも乗り越えられると思っていたので。これは完全に父の影響だなと思います。
父は、私が小学校でいじめられて泣きながら帰ったときに、「人間、大事なのは気持ちなんだ。痛くないと思ったら痛くない。乗り越えられる」と当時の“昭和魂” 炸裂で真剣に喝を入れてくれました。父の言葉を胸に毅然と学校へ通い続けたら、自分で乗り越えることができたんです。
美有姫:母は対照的に、海のように心が広くて、何を言われても三つ指ついて耐える奥ゆかしい人。父からは気持ちを強く持って立ち向かうことを学びましたが、母からは耐え忍ぶことが大切なときもあると学びました。真逆なふたりのいいところを半分ずつ受け継いだなと感じますね。半分ずつといいつつ、父の精神が出てくることが多めかもしれません(笑)。気持ちを強く持ち、どんな人にも物怖じせず意見を伝えることが、今の仕事の印象評論家では必要なことですから。