“挑戦”という言葉に、どういう印象を持つだろうか。「すごい」?「かっこいい」? はたまた「自分にはできない」?

今回の主人公であるプルデンシャル生命の石渡英敬(いしわた ひでたか)さんはこれまで、挫折と挑戦を繰り返してきた。新卒入社の会社で挫折して30歳で転職。36歳でマネージャーに挑戦して挫折。そして石渡さんは、ライフプランナーの最高位にまでなったあと、50歳になるこ2024年秋、再びマネージャーである営業所長に転身した。

心が折れてもすぐに立ちあがるような、とても強い人のように思える。でも石渡さんは「僕にとっての挑戦は高尚なものではなくて、よくよく見ると“逃げ”なんですよ」と笑う。

“挑戦”が“逃げ”とはどういうことなのだろう。彼のこれまでと考え方を紐解いて、その言葉の意味を今一度振り返りたい。




逃げられたのは「依存先」があったから。それが「自立」できた証

「――実は、36歳の時にも逃げました」

石渡さんは入社6年目、36歳の時に一度、管理職である営業所長になったことがある。2024年秋の職種変更は2回目の挑戦なのだ。

「2回目である今回と違い、1回目の職種変更は『なんとなく』という意味合いも大きかった。課題感を持ってのトライではなかったからか、10か月間でひとりも採用することができず、またも心を病み、1年たたずにライフプランナーへ戻ることにしたんです」

人間は誰しも逃げたいときがあるだろう。周囲を取り巻く環境からか、人からか。「でも、実際に逃げられる人ってどんな人だと思いますか?」と石渡さんが聞く。

石渡さんの答えは「依存先がある人」だった。

「とある本で、『自立とは依存先を増やすこと』という言葉と出会いました。それ以来、その考え方をとても大切にしています。誰かに助けてもらうことは、自立できてないと捉えられがちですが、それは違うんじゃないかと。助けてくれる誰かを多く持つことこそ、自立だと。僕は20年間のライフプランナー生活のおかげで、『自立』を実現できたと思っています」

「僕は困難に遭遇したとき、さまざまな『依存先』に救われてきました。お客さまや、妻や、ライフプランナー仲間や、僕がライフプランナーに戻ることを受け入れてくれた当時のマネージャー。今回、50歳での挑戦を応援してくれている今の支社長もそうです」


感情を動かす「オーダーメイド」で、今度は自分が「依存先」になる

「だから僕も、誰かの『依存先』のひとつになりたい。営業所長としてこれから僕が採用する人に対しては、とくにそう思っています」

「転職を考える人で、“逃げ”の感情がまったくない人はいないはず。自分に降りかかるマイナスから脱却したくて、そして脱却への挑戦として転職を考えるはずなんです。なら、僕はその方のひとつの『依存先』になりたい。逃げていいんです。逃げてから、一緒に理由を考えて、それが正しい選択だったと思えるように、一緒に挑戦していきたい」

石渡さんは、採用することを「僕のチームに入ってもらう」と表現する。

「プルデンシャルのライフプランナーは、決して孤独な仕事ではありません。この仕事によって、たくさんの『依存先』に支えられてきた僕自身が心からそう思っているからこそ、候補者の方にもそれを伝えたいんです」

一人ひとりと本気で向き合い、相手の人生に寄り添いたいと考える石渡さん。だからこそ、想いの伝え方についても真剣に考えているそうだ。

「どうやって伝えたら相手に響くか、相手のタイプや傾向を一生懸命考えますね。ときには動物占いで相手のタイプを探ることもありますよ(笑)」と笑顔を見せる。とはいえ、石渡さん自身は転職や、職種変更に挑戦するきっかけについて“うっかり”と話していた。ロジックよりも直感が大事だ、とも。そうすると改めて疑問が浮かんでくる。

――もともとは論理派な石渡さんが、直感や感情を信じる理由はなんですか。

問いを投げかけると、「人はものごとを感情で決めるから」と答えが返ってきた。

「確かに僕は、論理においてはもしかしたら秀でている部分があるのかもしれません。ですが、もし何かを決断するときに、『やってみたいことがあるけれど、失敗する確率が成功する確率よりも1%高いから、挑戦はやめておこう』と論理的に考えるでしょうか? きっとそれよりも、『そのタイミングだと思った』とか『今、このめぐりあわせはご縁だと思えた』という感情的な理由で決断をすることのほうが多いのではないでしょうか。僕もそうなんです」

だからこそ、候補者とのかかわり方は「オーダーメイド」でないといけないと、石渡さんは言う。

「例えば、ご家族を大切にしている候補者の方を前にしたら、『もっとご家族を大切にするための時間を一緒に作りませんか?』と声をかける。もっと自分を高い目標のもとに置きたい方であれば、『私と一緒にもっと上を目指していきましょう!』と具体的な数字と共にお伝えする。感情を動かすためにその人に合った論理を展開したい。だからとことん相手の人生を考えた上で、伝え方も工夫します。結局、論理と直感は紙一重なんですよね」


石渡さんの「My Rules」

挫折、逃げ……そんな一見ネガティブともとらえられる言葉が多く登場した石渡さんのインタビュー。しかしそこには逃げを挑戦に変えられる、ヒントが散りばめられている。そんな石渡さんの「My Rules」とは?


家族が1番、仲間が2番、仕事が3番

「約10年前、エグゼクティブ・ライフプランナーになったとき、全社に向けてスピーチをする機会をいただけました。僕はそのスピーチで、この言葉を明確に伝えました」

「今も変わらず大切にしています。例えば、仲間内で勉強会を開いたとする。家族の用事で欠席するのはかまわないし、それは優先すべき事項です。ただ、別の仕事とバッティングしたのであれば、僕なら仲間のために仕事をリスケする。そんな順番付けをしっかりしています。もちろんお客さまに何かお困り事があったときには優先して対応しますが、仕事に振り回されてしまうことはないようにしています」


「楽しい」という言葉を使う

「僕はライフプランナーの仕事に対して、『楽しい』という表現をあまり使ってきませんでした。僕にとってライフプランナーの仕事とは、黒子。お客さまの人生に寄りそう黒子ですから、その仕事に対して『楽しい』という言葉を使ってはいけないと、なんとなく思っていたんです。僕がプロフェッショナル思考といいますか、完璧にとことん突き詰めたいタイプなのもあると思います」

「でも管理職になってからは、ライフプランナーをずっと続けていたら得られなかったであろう新しい体験を『楽しんでいる』と表現するようにしています。『仕事を楽しんでいる』という言葉を選ぶことすらも、挑戦のひとつなんです」


挑戦を続ける、「挑戦する人」を支える

「今、採用活動の中でお会いしている方は女性が多いんです。僕は、男性だけじゃなくて、女性にも活躍してほしいという願いを強く持っている方だと思います」

現在、プルデンシャルで働くライフプランナーのうち、約9割が男性社員。これには、プルデンシャルが創業からしばらくの間、「女性の仕事だと思われてきた生命保険の営業を、男性がやる」という“逆張り”で成長してきたという経緯がある。

「世界には男性と女性がほぼ半分ずついるのだから、今後も男性多数の体制では、持続可能な会社とは言えないんじゃないかと。もちろん会社も変わろうとしている。僕はプルデンシャルを今以上に多様な価値観、多様な生き方であふれる会社にしたいという想いで営業所長をやっているんです。そしてそれはきっと、社会全体の多様性を高めることにも貢献できると信じています」

50歳で新たなキャリアを歩み始めた石渡さんの、自分らしい働き方とは。そうたずねると、力強い答えが返ってきた。

――挑戦を続けること、「挑戦する人」を支えること。

「繰り返しになりますが、挑戦するというのは“逃げる”ということを含んでいて、それでもいい、ということを補足しておきます。総理大臣を目指すとか、海外移住するとか、そういうことだけが挑戦でしょうか? 僕は違うと思います。もし、『自分は何も挑戦できていない』、『このままの自分でいいんだろうか?』と悩む人がいたら、僕はこうお伝えしたいです」

「このミモザマガジンを読んでいるその一歩が、すでに『挑戦』ですよ、と」


執筆:山口 真央 撮影:梶 礼哉 構成:プルデンシャル生命広報・ミモザマガジン編集部