3月から別部署への異動が決まり、今の業務を引き継ぎ始めてから1か月が経とうとしている。今は、私の後任を探すために面接をしたり、引き継ぎ資料を作成したり、新しい部署の会議に参加したりしている。新たな業務が加わり、毎日バタバタと仕事をしている最中である。

新しいことを始めるとき、私はいつもワクワクする。ほぼ新設される部署であり、人数も少ないので、組織や業務も含めて0から作っていかなければならない。面白そうだな、と思っている自分がいる。

しかし、異動となると上司や関わる人も変わる。新しいチャレンジに対して本当に適性があるのか?という不安も大きいけれど、関わる人が変化するなかで、私はうまく溶け込んでいけるのだろうか?という不安もある。だって、仕事をしていくうえでの悩みって人間関係であることがほとんどだったし、今までも人間関係について常に悩み続けてきたから。

私は社歴が長い。だからまったく新しい人間関係のなかで0から始めなければいけないという訳ではない。でも、性格や人間性など一緒に働く上で重要視する事柄は人によって異なる。うまくやっていけるのだろうか?うまくいかなかったらどうしよう?そう考え始めると、私のなかの不安はどんどん拡張していくようだった。

先日、新しいチームでどのような方針で今後業務を行っていくのかを決める会議に参加した。3名しかいないかなり小規模な会議だったから、私も「この意見は適切なんだろうか?」「議論に値するのだろうか?」と悩みながらも細かい議題を出し、意見を述べる。私の出した議題に対して他のメンバーが方針を話し合い、そしてどのように進めていくべきかを決めていく。「ああ、この人たちは私の話をきちんと聞いてくれるし、ここが私の新しい居場所になるのだな」と素直に思った。

自分の意見に対して真剣に耳を傾けてくれる。問題視している点をどうすべきか考えてくれる。それだけで、私は自分が肯定された気持ちになったし、さらにワクワクできるようになった。ここで私は、今よりも更に自由に振る舞ってもいいのかもしれない。

仕事で関わる人が変わっていくと、場の雰囲気や発言権の有無もその分変動していく。今までのチームでは、私が意見を出したところで否定されることが多く、結局大まかな方針を決めるのは他のメンバーや上司に当たる人間だったので、「ここで私が何か言ったところで、変わらないのだろう」という諦めにも似た気持ちが少なからずあったのだと思う。必ず他のメンバーや上司にお伺いを立てなければならない。それはミスや間違いを防ぐ意味合いでは正しいけれど、間接的に人格を否定されるような気持ちになることも多々あり、自信を喪失したこともあった。

今までのチームの人と仕事についての話をしていくなかで、私は自分や自分の仕事、仕事をするうえでの人間関係、すべてに対して少しだけ投げやりな気持ちを持っていたのかもしれない。新しい関わりが生まれ、今までの自分の仕事の向き合い方、ネガティブな気持ちに気がついてしまったのだった。

以前、直属の上司から「あなたは今の仕事が苦手だろうし、性格的に向いてないかもしれないけど、それなりに頑張っていると思うよ」と言われたことがある。いや、気づいてたのかよ!と心のなかでツッコミを入れつつも、言われたことはその通りで否定できなかった自分がいる。

仕事に関するエッセイを全3回書くなかで、私は自分に対して「仕事のできるタイプではない」「あまりやる気がない」「そもそも会社員が向いていないのかも」と散々ネガティブな発言をしてきた。でも、本当は違うのかもしれない。

魚は陸で歩けないし、犬は空を飛べない。でも、それぞれに合った居場所、活躍できるところは必ずある。きっと私も同じだ。今所属するチームでの仕事内容や人間関係に向いていないながらももがき苦しんでいただけで、居場所を変えてみれば、仕事ができるタイプになるかもしれないし、今よりやる気や情熱を持って仕事に取り組めるようにきっとなるのだと思う。

まったく新しい仕事をしていくことは不安だった。本当にできるのだろか?それはまだわからない。でも今は、誰が見ても苦手で向いていない仕事から離れることができ、更に新しい居場所に行くことができてよかったのかもしれないと思っている。未練もまったくない。後任(予定)の方は、真面目で優秀できっと私よりも活躍してくれる。もっとよいチームになっていくのだと思う。

自分に合った仕事ってなんだろう?天職って?好きなことをどうやって見つければいいのだろう?と考えることがある。私はもう、社会人になってからそれなりに長い時間が過ぎてしまったけれど、未だに同じような壁にぶち当たる。ずっとわからないままなのかもしれない。

でも、そのたびに立ち止まって考えたい。私には何ができるんだろうか。どうすれば今の仕事を好きになれるのだろう。

悩むことは、きっと前に進むきっかけに繋がる。大変だし、辛いこともある。でも働くこと自体は悪いことではない。せっかく毎日働くのだから、自分を明るい方向に導いていきたい。できるだけ自分に自信を持ちながら、苦手な仕事でも好きな部分や夢中になれるところを見つけて、自分の居場所や天職にしていきたいと思う。

あたそ
普段は会社員。たまにインターネット上であれこれ文章を書いたりトークイベントを開いたりしている。好きな飲みものは酒。
著書は、『女を忘れるといいぞ』(KADOKAWA)、『孤独も板につきまして 気ままで上々、「ソロ」な日々』(大和出版)がある。